世界のMCR4

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■■不遇な優等生 サンダーボルト■■



ラムロン戦争のサンダーボルト

20世紀に地球防衛戦の要としてもてはやされていた有人戦闘ロボットは、21世紀初頭に主役の座を宇宙艦に奪われた。
ワープ航行可能な宇宙艦隊の編成により、地球防衛戦は太陽系を遠く離れた場所、つまりよその惑星で行えるようになったのである。
サンダーボルトはそんな21世紀初頭、MCR冷遇時代に開発された空軍機だ。

この頃のTDFのドクトリンは宇宙艦隊万能主義だった。
「恒星間戦争は宇宙艦隊同士の決戦で決着する」という考え。
サンダーボルトはそんな時代のTDF空軍の主力機だ。

当時の空戦用MCRに求められた性能は、安価で生産できること、航続距離が長いこと、整備しやすいこととされた。

この仕様要求で、とんでもないダメ機体がいくつも開発されちゃったんだけど、それは別の話。
サンダーボルトは同時期の高級機シュピーゲルよりも人間に近いシルエットでスタイリッシュで後発のファントムやスティンガーにも見劣りしない。

バルカイザーのような人型MCRの量産はいつの時代でも開発者の憧れで、サンダーボルトはその点かなり頑張った。
機体は軽量で、背部にあるのは小型のエンジンと、翼型の推進機だけ。
強力な大型エンジンを背負ったパワータイプ機との違いがはっきりしている。
パワーはないが操縦性は良好で、練習機からの乗り換えもスムーズだった。

安くて便利なのが取り柄の機体に強さまで求めるのはさすがに図々しいから、戦闘力は敵惑星のゲリラ部隊を掃討できること、とされた。
ゲリラ部隊とは、艦隊決戦後も抵抗を続ける敵の敗残兵のことだ。
すでに敵が敗けている想定も充分に図々しいが、常に想定内に収まらないのが戦争である。戦争に限った話じゃないけど。
ラムロン戦争の主戦場は敵母星『ラムロン』であり、サンダーボルトを主力とするTDFはラムロン軍の激しい抵抗を受け、大損害を被った。

■■ラムロン戦争■■
サンダーボルトは大型機のシュピーゲルと連携し、ラムロン星の制空権を奪う事に成功したものの、そこで攻勢は頓挫した。
制空権をとれたのも、ラムロンの主力は陸軍と鉄道軍(地球の海軍に近い)で、空戦は重視していかなったからだ。
ラムロンの陸戦兵器はあまりに強力で、あまりに数が多く、無尽蔵のエネルギー補給に支えられていた。
しかもラムロン軍はゲリラでも敗残兵でもない、やる気に満ちた正規軍である。
つまり相手が悪かったのだ。

サンダーボルトは非力な武装と数の劣勢を航続距離で補い、なんとか戦線を構築してTDFの空戦用重MCRを補佐した。
艦隊万能主義は若干修正され、MCRの生産数が増えた頃に戦争は集結。
サンダーボルトはラムロン戦争の主役と言いづらいけど名脇役だったと言えるんじゃないかな。

■■アビック内戦■■
ラムロン戦争後もサンダーボルトは様々な惑星で重宝された。
本来の任務、艦隊決戦後の見張り番の能力は充分だった。
敵が軍隊ではなく、MCRすら持っていない場合は、それこそサンダーボルトの出番だ。
超電気科学研究所アビック支部の制圧にもサンダーボルトは主力空戦MCRとして投入された。

アビック星は平和な星だったし、超電気科学研究所の戦力は警備用のエアビークルだった。
相手は正規軍ではないし、ゲリラ部隊でもない。そこにサンダーボルトを投入したのは常識で考えれば妥当な判断だ。
ただし超電気科学研究所のエアビークル、通称『バルビークル』は、警備用どころかその気になればどこの正規軍とも真っ向勝負できる超兵器だった。
バルビークルのΩウェポンは採掘用というにはオーバースペックで、どちらかというと必殺武器だ。
サンダーボルトはまたもや分の悪い勝負をしなければならなくならず、大苦戦した上、最前線から降ろされた。
「エアビークルごときに後れを取るとは何事か!」
と偉い人たちに怒鳴られたそうだけど、大昔は戦艦が飛行機ごときに遅れを取った事もあったんだし、叱られるのは可哀想だよな。



アビック内戦のサンダーボルト

サンダーボルトはちょっと非力だけど、しっかり者の優等生だ。
本来は荒波に揉まれることのない人生を送るはずだったんだけど、生まれた時代が悪かった。
時代が経過するほどサンダーボルトはマイナーになっていき、最近はさっぱりキット化されなくなった。
「悲運の名機」というほど悲運でもない(想定内の相手なら善戦してる)のも、かえって存在感を地味にしている。
2010年代のMCRならば、シュピーゲルやファントムの方が圧倒的に知名度が高い。
強さは人気のバロメーターだから仕方がないけど、強さが全てじゃないのよ。


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