世界のMCR6

世界のMCR6


■■足もと見ない アイテール■■



アイテール

「時代の徒花」は兵器の世界にかぎらず、いたるところに生まれるけど、MCR以前の「手足つき航空機」はまさに徒花だった。
スピリットみたいに足がついてないのに傑作機になったMCRもいるので古いからダメってわけでもないけど、古くて凡庸だと時代遅れな扱いになってしまうのは致し方ない。

ゴゴー戦争が終わるとすぐに世界各国はMCRの開発競争を始めた。
「世界最初のMCR」の称号を勝ち取ったサンダーウルフは飛べない、走れない、物が持てないの三拍子で、残念な結果に終わった。
「世界最初の成功したMCR」の称号の椅子はまだ空いている。レースは始まったばかりだった。

イギリスはMCR開発に積極的で、新型戦闘機や戦車用のリソースを全てつぎ込んだ。
この時期、フランスがラファール戦闘機を、日本が88式戦車を設計したのとは対照的だ。
イギリスは第二次大戦後、ジェット機開発では今ひとつパッとしなかったから、MCRで巻き返しを図りたかった。

イギリス空軍はサンダーウルフと同時期に様々なMCRを開発していた。アイテールはその一つだ。

アイテールはギリシャ神話の大空の神だ。
この頃のMCRは気張っていたのかポセイドンやアルテミス等、神様の名前が多い(そして、だいたい名前負けしてしまった)。

アイテールはジェットエンジンをとっかえひっかえして、当時最新型のジェットエンジンを装着する事ができた。
このエンジンは純地球産ではなく、異星技術を導入した高出力の優れものだ。
ちなみに戦後型ジェットはMCRはもちろんのこと、VTOL機の能力を一気に引き上げ、オスプレイ等の傑作ヘリジェットを生み出した。

アイテールの腕は非装甲だが、5本指のマニュピレータつき。
エンジンに直接生やすような横着はせず、胴部から伸ばす。
脚は申し訳程度の装甲板をつけているが、初期のMCRにしては立派なものだ。
下からの攻撃に弱そうだし、実際弱い。
でも、初期のMCRが想定していた運用はUFOの迎撃だったので、問題とみなされなかった。
ゴゴー軍団の侵略メカは宇宙から攻めてくるんだから、上方からの攻撃に耐える事を優先させたわけだ。

胴部は真横から見ると、フェアリー ガネットやBAC ライトニングを思わせる。
イギリスの飛行機は凄くスマートなのと、凄くもっさりしたのに二極化してる(これは暴論。どっちつかずなのも多いよ)けど、アイテールは後者だ。
イギリス機の名誉のために言っておくけど、もっさり型でも高性能な飛行機もあるので、あなどれないぞ。
尾部には大きな垂直尾翼や、推進用の小型ジェット(これは純地球産)があって、堅実な設計。
推進力に余裕があったので、固定武装としてミサイルランチャーを取りつける豪華な仕様。
ガチガチに保守的なわけではなく、攻めの姿勢も見せている。
順調に設計が進んだアイテールだが、試作機が完成して大問題が明らかになった。



試作型アイテール

試作型は下方視界が最悪で、着陸が難しく、歩行実験では盛大に事故っちゃた。
これはコクピットを胴体中央、つまり人間の頭の位置に置いたため、下が見えないのだ。
ダンボールをかかえて、階段を降りる事を想像して欲しい。あの状態は怖いよね。
前方にカメラを多めに取り付けて、下はモニターごしに見ることにしたけど不評。
結局、コクピットの位置を普通の飛行機のように前方にする事で解決した。最初からそうすれば良かったのに。
アイテールの設計はもともと堅実な飛行機から始まったのに、最後に欲が出て人の形に似せようとしたのが裏目に出たわけだ。

でもコクピットの位置を変えた生産型は好評で、世界各国に輸出された。
日本の航空自衛隊も少数ながら配備している。
アイテールはコクピット問題のせいで「世界最初の成功したMCR」の称号も逃してしまったが、それなら配備数ナンバーワンを目指せば良い。
拡張性は高いからどんな任務もこなせる。練習機にも、標的曳航機にもなる。
世界中の空をアイテールが飛び回ることになったら、それは真の成功じゃないか。

しかし、新兵器開発の時代の流れはおそろしく早い。
戦車も、戦艦も、軍用機も、完成したそばから旧式化した時代があった。MCRも例外ではない。
アイテールの量産が始まった頃には、手足つき航空機ではない「人型MCR」の時代が無情にも始まっていたのだ(以前にも同じ展開を書いたな)。
本格的な大量生産計画はキャンセル、多くの工場は最新型のタイフーンの製造で手一杯になった。

生産されたアイテールは後方支援任務についた。
練習機にはならなかった。機体特性が人型MCRとは違うので練習に向かなかったからだ。
標的曳航機にもなれなかった。そんな仕事は飛行機で充分だったからだ。

ここで終わると悲しい話だが、実はまだちょっと先がある。
アイテールはロケットエンジンを装備した宇宙用も作られていたのだ。
宇宙なら貧弱な手足でも全く問題ないし、胴体の設計に余裕があったので燃料や追加装備を自由につけられた。
なにより手先の器用さが幸いして、宇宙要塞の建設に重宝がられた。
固定武装のミサイルポッドは侵略UFOの襲来に怯えながら宇宙で作業する人々に安心感を与えた。
アイテールは最終的に名前に恥じない仕事ができたと言えるんじゃないかな。


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