続・世界のMCR
続・世界のMCR
■■バルカイザー復活せよ 重MCR開発競争■■
MCRの開発の歴史は、試行錯誤と開発競争の歴史でもあった。
量産型MCRの全高は、バルカイザーの半分の15m前後がスタンダードサイズとなっている。
しかし、同時進行で30m前後のバルカイザーサイズの重MCRも研究、開発されていたのである。
MCR開発当初は、MCRのサイズにも標準規格が無かったため、「重」MCRという言葉は無く、15m級、30m級等の大きさに分けた呼び方をしていた。
30m級のMCRにも多数のプロジェクトチームがあったが、彼らの願いは一つ
「我らのMCRをスタンダードサイズに!」
でった。
それでは、30m級MCRのスタンダード化に賭けた開発陣の成果を見てみよう。
XMCR-38「ポセイドン」
イギリス海軍が初めて完成させた大型MCRが「ポセイドン」である。
バルカイザーより巨大な全高38mの巨体は、これからの地球防衛の旗印として期待されていた。
が、その姿は通常、胸より上しか見る事ができない。
というのも、ポセイドンの主な活動範囲は沿岸部であり、プールにつかったような状態でいるのが常なのである。
ポセイドンは2速歩行の不安定さを解消するために、海水の浮力を使い、さらに胸部に浮揚剤をたっぷり詰め込んで、何とかバランスをとっていたからである。
ポセイドンの水中での歩行速度は時速10ノット。
何と最悪な事に、足の立たないところは推進できない。と言うよりも、そのまま沈没してしまうのである。
ポセイドンはあくまで足のついた水上艦であり、潜水艦では無い。つまりカナヅチだったのだ。
当然の事だが、ポセイドンに潜水艦としての機能を持たせる事は、初期の仕様には盛り込まれていた。
ところが、陸上歩行能力と、潜水艦としての能力の両立が当時の技術では困難だったため、MCRの本来の目的である、陸上歩行を優先させたのだった。
結局、ポセイドンの陸上歩行の夢はかなわなかった。
当時の技術では、その巨体を維持するだけのバランサーを生み出せなかったのである。
ポセイドンは実験的に沿岸をウロウロする以上の事はできなかった。
各国海軍(及び海上自衛隊)はその後も粘りに粘って開発を続けた。
そしてイギリスは重MCRの傑作と言われる「バンガード」を作り出す。
バンガードは重装甲、重火力、高機動と3拍子揃った名機であり、量産型バルカイザーとしての立ち位置を大宣伝していたが、それを「フフン」とせせら笑う人々がいた。
それは誰あろう、発足して間もない宇宙軍の面々である。
彼らに言わせると「バンガード」を始め、地球での運用を前提とした重MCRは不恰好である。
バルカイザーはもっと人間に近い形体ではないか。
宇宙軍はまず宇宙基地の建造に全力を注いだため、MCRの開発競争には大幅に乗り遅れてしまっていた。
すでに30m級のMCRは最初から「重MCR」と呼ばれる事になってしまっていたが、
宇宙軍は重MCRから「重」の文字を改めて外すための建造計画をあらかじめいくつも用意していた。
それらに共通したコンセプトは、スリムで運動性が良い事。
そして、宇宙軍にはそれを可能にさせる舞台があった。
「月面」である。
月面の重力は地球の6分の1である。
海水の浮力などに頼らなくても、十分歩行ができ、ジャンプや短時間の滞空も可能なのだ。
そんな地の利を生かして、宇宙軍が最初に開発した重MCRが「アルテミス」である。
XHMCR-04「アルテミス」
ポセイドンといい、アルテミスといい、初期の大型MCRに神話からとった名前が多いのは、はったりを利かせるためである。
アルテミスは全高30mと、バルカイザーと同じ大きさであり、武装もショルダーバルカンと、ミサイルフィストを再現した意欲作である。
もっともミサイルフィストは回収時のコントロール困難なため、ワイヤーで引き戻す方式が採用された。
重力が小さい月面なら、拳を落下させる前にワイヤーで引き戻すことが可能なのだ。
アルテミスは目標としていた仕様を見事にクリアしていた機体である。
欠点としては、その後開発された通常サイズのMCRより遥かに脆弱だった事だ。
アルテミスは、地球で開発され、宇宙戦闘用にパーツを換装したMCRと戦った場合、1対1でも勝てなかった。
ミサイルフィストは当たらないし、攻撃を受ければ、関節が簡単に破損した。
初期に月面で開発されたMCRは、関節もフレームも地球製のものに比べて弱かったのである。
その後、宇宙軍はアルテミスの反省を活かし「ルナカイザー」を作り出した。
ルナカイザーは宇宙における量産型バルカイザーのポジションに見事つく事ができた。
ただし「量産型」とは言っても、1体しか作られなかったバルカイザーよりは、多く作られたというだけの話である。
本当の意味での量産権を勝ち取ったのは15m級のMCRで、量産型バルカイザーは「重」の肩書きを外す事はできなかった。
結局、それまで開発されていた大型MCRは全て「重MCR」と呼ばれる事となった。
開発者達もさぞや無念だったろう。
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