バルビークルの時代

バルビークルの時代


■■空飛ぶ車■■
バルビークルは超電気科学研究所が開発した、飛行可能な車両である。
バルビークルの開発以前にも、90度傾けたホイールから高圧ガスを噴射して飛行するタイプの車は、1970年代初頭には同研究所の特殊車両として使用されていた。
当時の研究所での通称は「エアカー」だった。


エアカー

ゴゴー戦争では、災害やゴゴー軍団の攻撃で破壊された場所の調査に使用された。
博士や仲間と意見が衝突した所員が研究所を飛び出した時も、たいていエアカーが使われたらしい。
所員たちにとってエアカーは特殊車両ではなく一般車だったようだ。


■■AFAV計画■■
ゴゴー戦争後、地球の科学は異星技術の研究により劇的に進化した。
フライングジープの開発に手こずったアメリカ軍は、異星の高性能エンジン技術を手に入れたことで、本格的な『装甲戦闘飛行車両(Armoured Fighting Air Vehicle)』を計画する。
超電気科学研究所も世界中の軍隊(当時はTDF発足前だった)に飛行車両のサンプルデータを提供した。
それが『バルビークル』である。

超電気科学研究所はゴゴー戦争直後から、異星人を秘密裏に保護しており、様々な惑星の情報も得ていた。
いずれ、恒星間航行が可能になれば、浮遊島などの特殊な環境で使う乗り物が必要になる。
バルビークルは宇宙探検車の雛形でもあった。


初期のバルビークル


『AFAV』の開発は順調に進んだが、世間の注目度は低かった。
フライングジープの頃とは違い、敵はゴゴー軍団の第二波である。
地球と異星技術のミキシング兵器ならば、『オスプレイ』などのヘリジェットの方が攻撃力がある。
地球防衛の主力、空戦用MCR(現代の目から見ると不格好だが)も次々に完成している。
すでに「空飛ぶクルマ」は夢の乗り物ではなくなっていた。

しかし、各国陸軍(および後のTDF)は、AFAVの有用性が戦闘力ではない事を理解していた。
強力な侵略メカとの殴り合いには使えないが、任務はいくらでもある。
AFAVは「エアビークル」、または単に「ビークル」と呼ばれ陸軍に広く行き渡った(バルビークルの呼称は超電気科学研究所が使わせなかった)。
エアビークルは従来の装輪、装軌装甲車と並行して生産が続いていく。


■■宇宙時代のエアビークル■■
地球の軍編成は、恒星間航行が始まったことにより、大変革を強いられる。
「宇宙艦隊万能主義」により、予算のかかるMCRは開発予算の縮小が命じられる。
もともと生産コストのかからないエアビークルはMCRに代わる戦力として表舞台に立つ。
惑星調査はもちろん、艦隊戦に勝利した後の惑星占領や、暴徒鎮圧にもエアビークルは活躍した。
ラムロン戦争では、戦闘はMCRに任せ、偵察などの多彩な任務をこなした(損耗も比較的少なかった)。

一方、超電気科学研究所は惑星開拓にエアビークルをフルに活用していた。
惑星開拓経験が豊富な異星人スタッフの意見を取り入れていたためである。
バルビークルの開発は惑星開拓用、戦闘用ともに続いた。


■■アビック内戦■■
超電気科学研究所は、ゴゴー戦争の終戦直後から行き場を失った異星人を積極的に保護していた。
人道上の理由はもちろんあるが、様々な技術を吸収する目的もあった。
しかし、TDFから見れば、スパイ行為を歓迎しているようなものである。
ワープ航法が実用化する前ならともかく、恒星間航行が簡単なるほど地球の情報は筒抜けになる。
ラムロン戦争でTDFが敗戦を繰り返すたび、研究所が異星人に加担している疑惑は拡大した。

2010年。超電気科学研究所アビック支部をTDFが襲撃した。
TDFがラムロン戦争に勝利する間近の時期である。
また、アビック支部長の十条スズナが不在のタイミングでもあった。
十条はこの時、長期入院中の天護(あまもり)博士を見舞うため、地球本部にいたのである。
TDF諜報部にマークされた十条は、アビックに連絡をとることもできなかった。

超電気科学研究所地球本部は、指揮系統も管理体制も混乱していた。
「支部長不在のアビック支部は烏合の衆であり、苦もなく制圧できる」
それがTDFの目論見だった。
しかし「支部長不在」と「本部の混乱」は、全て裏目に出る。
アビック支部は、たった12機のバルビークルで支部の破壊も辞さない徹底抗戦に打って出た。

超電気科学研究所は、しばしば独断で過激な行動をとる。
バルカイザーも結果的に地球を救ったため咎められていないが、政府の許可も得ず極秘に開発され、戦闘で市街地を炎上させる事もあった。
さらにアビック支部の研究員は、ほとんどが異星人である。
異星人に対して容赦のないTDFに降伏することは、何よりも危険だった。

TDF側はバルビークルの戦闘力も軽く見ていた。
アビック占領部隊は事前に
「バルビークルの戦闘力はサラディンに劣る」
との報告を受けていた。その内容は正しい
サラディンは当時のTDFで最強クラスの陸戦MCRだが、20世紀末に開発された旧式機でもある。
司令部は「旧式機にも劣る」と解釈した。


ラムロン戦争とサラディン

アビック内戦により、超電気科学研究所とTDFの関係は悪化するが、つかず離れずの状態は続いた。
TDFにとって研究所は危険分子だが「銀河の解放者バルカイザーの伝説」に欠かせない存在である。
超電気科学研究所は地球の広告塔として、積極的に協力する事でバランスをとった。
TDFが超電気科学研究所と同じ警報音を使うのも、両者の取り引きの産物である。

21世紀半ばには、TDFも様々な異星人と同盟を組み、銀河文明圏の一員になる。
しかし超電気科学研究所との関係は、完全な修復はできなかった。
40年以上にわたる両者の駆け引きは、結果が凶と出る事が多かったのである。


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