世界のMCR5

世界のMCR5


■■成功は行き詰まりのもと シキシマ級■■



ミカサ

ゴゴー戦争が終り、世界各国ではMCR(有人戦闘ロボット)開発競争が始まった。
早い話がバルカイザーに代わって、異星人から地球を守る強いロボを作ろうっていう競争だ。
そして、日本の海上自衛隊は大型MCR競争に参加した(大型MCR開発競争については続・世界のMCRを読んでね)。
名前はシキシマ級。日本海海戦を大勝利に導いた戦艦三笠は敷島級の4番艦だ。
由緒ある名前だけど、ここで長門、金剛などの大型戦艦の名前をつけられなかったあたり、どうにも煮え切らない。
先見の明があったのか、早いうちに諦めていたのか、シキシマ級は微妙な大きさのMCRとして完成した。

大型MCRはたいていバルカイザーと同じ30mを目指すんだけど、シキシマ級はかなり控えめだ。
ポセイドンやバンガードは艦橋を人間の頭部あたりに設置していたが、シキシマ級は胸部にある。
いきなり人型は目指さず、脚部は安定性の高い獣脚型とした。
直立しても全高20mだけど、腰をぐっと落とすと17m前後になる。
通常型MCRが15m前後だから、ほんの少し長身程度。つまり全然大型じゃなかった。
大型化の目標は達成できなかったが、大型MCRポセイドンが地上を歩けない失敗作だった事に比べれば、
初期のMCRとしては大成功と言って良いんじゃないだろうか。小さいけど。

そもそも、陸戦用MCRは空戦用MCRよりも開発が難しいのだ。
「空を飛ばす方が難しいんじゃない?」
と思う人が多いけど、昔は歩くMCRを作るのは大変だった。
大雑把な言い方をすれば、空戦用MCRは推進力があれば飛べるし戦える。
でも、陸戦用はあれこれバランスを取らないと転んじゃうので、なかなか戦闘可能なレベルに達しないのだ。
歩くのが大変だからといって、地面すれすれのホバリングでごまかすわけにもいかないしね。サンダーウルフみたいに。
欲張らない設計が功を奏して、シキシマ級はちゃんと歩けて戦闘できるMCRになった。
足裏の面積が大きく接地圧が小さいので、安定性が高い。
膝や腿の重量が軽いので動作も機敏。
そうなると大型かどうかなんて、ささいな問題なので、大量生産することに決定した。
名前のネタも敷島級戦艦だけじゃ足りなくなって、日本海海戦に参加した軍艦が全て埋まり、マツシマなどもっと古い軍艦の名前も並んだ。

腕部の仕様も堅実で、マニュピレータはつけず、武装は腕ごと交換する方式にした。
その方が量産しやすいからね。
主兵装はビーム砲とした。全体的に堅実な設計なのに、武装は意外に豪華。
これは侵略UFOを迎撃するには大火力が必要と判断したからだ。
後に対地用の機関砲を筆頭に、様々な武装が作られた。


チャレンジャーとウネビ

シキシマ級の将来は順風満帆に思えた。
だけど時代の荒波はシキシマ級を転覆させることになった。
人型の陸戦用MCRの量産化が始まったのだ。

ようやく日本中にシキシマ型が配備された頃、人型MCRの傑作チャレンジャーが世界中に輸出され始めた。
MCRが目指していたのはバルカイザーだ。それは大型だけではなく人型も意味する。
チャレンジャーの全高は12mだが体型は人間に近く、陸戦用MCRの大本命だった。

シキシマ級はチャレンジャーより大型だし、火力はサイズ差でカバーできる。
欠点は、大型でもないのに必要な乗員が三人だった事だ。
シキシマ級の操縦に慣れると、他のMCRへの乗り換えが難しい問題も浮き彫りになってきた。
副操縦士をロボット(有人ロボじゃなくて、ヒューマノイドね)に任せたりしたけど、
それなら最初からコンピュータ制御を前提に設計すれば良かったわけで本末転倒だ。
シキシマ級は分類上は大型MCRだ。しかも大型MCRとしては異例なくらい、大量生産されてしまった。
そんな歪みが重なって、いつの間にか扱いに困る存在になっていたのだ。

日本には超電気科学研究所があったが、兵器開発は従来の地球技術で行う事が多かった。
なにかと旧式に見られがちな88式戦車だってネオローラン戦争時は最新兵器だぞ。
「オオスミ」の性能は世界最高水準だけど、あれは超電気科学研究所製だからノーカウントだ。
日本のMCR技術が遅れた理由はいろいろあるが、天護(あまもり)博士が日本人科学者、技術者に無茶苦茶嫌われてたのも大きかったらしい。
天護博士は自分に頭を下げる人にはやや協力的で、そうでない人には絶対に非協力的だった。
同じ日本人に横柄な態度で接せられたら、腹も立とうというもの。
1980年代、日本の家電や自動車(あとビデオゲーム)が世界を席巻したのは、天護博士のご機嫌をとる必要が無かったからかもしれない。

でも、天護博士に頭を下げなくたって、シキシマ級は世界を席巻してたかもしれない。
歴史にifは禁物だけど、ポセイドンがちゃんと歩けて大型MCRが覇権を握っていたら、操縦しやすい三座のシキシマ級は傑作機になってたんじゃないだろうか。
現実には、そんな未来は来なかったけど。


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