サタゼウスの時代
サタゼウスの時代
■■恒星間文明圏■■
21世紀初頭。それは恒星間戦争の時代でもあった。
地球、ラムロン、チャトラム、アドリーなど様々な文明圏が、銀河崩壊から復興するとともに領土拡張を始め、他星系と頻繁に接触する事となった。
そして、他星系との接触は「戦争」と同義だったのである。
中でも地球は特殊な歴史的経緯から、反異星人感情が根強く、他星系に対する大規模な戦争を積極的に行っていた。
20世紀末まで存在した、ゴゴー軍団の侵略部隊の構成員は、さまざまな星系の出身者の混成軍であり、異種族との交流は珍しい事では無かった、
ただし、ゴゴー軍団の支配下に入らなかった地球は、「宇宙人」という名の単一種族による一方的な侵略を受けたという認識しか持たなかった。
そのため、地球人の異星人に対する怒りはすさまじく、「地球防衛」の名の下に、戦火を拡大し続けていったのである。
しかし、21世紀半ばには、地球人も銀河系の事情が分かるようになってくると共に、異星人に対する根強い偏見も次第に薄れていった。
地球が戦争の代わりに、外交交渉を頻繁に行うようになるにつれて、地球以外の星系との技術交換も頻繁に行われるようになる。
多星系どうしの技術交換はスムーズに行われた。
どの星系の技術もゴゴー軍団のオーバーテクノロジーを元にしていたため、転用が容易だったためである。
また、科学技術に限らず、芸術や料理等、様々な文化が行きかう事により、恒星間文明発足の時代が到来した。
それは銀河の片隅に芽生えた豆つぶ程度の文明だったが、当時の地球人にとってはまさに大銀河文明であった。
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TDF(地球防衛軍)がラムロンから購入した「ヴァハ級砲艦」
主砲には地球の技術が導入されている
■■宇宙海賊連合■■
様々な星系の宇宙への進出は、犯罪者の宇宙への拡散も意味していた。
犯罪者たちは、宇宙船を一隻持っていれば、宇宙商船や植民惑星に対する襲撃を行う事ができた。
さらに、戦争中に反乱を起こし、離反した宇宙艦隊ともなれば、恒星間レベルの脅威となっていた。
全ての星系に特有の悩みである「宇宙海賊」の誕生である。
当然、宇宙海賊はあらゆる星系から追われる存在となった。
海賊達が生き残るためには、異星人とも積極的に手を組み、技術の交換を行う必要があった。
海賊の構成員には地球人の占める割合も少なくない。海賊となった地球人は、異星人に対する偏見をいち早く克服していた。
宇宙海賊達は恒星間文明圏をいち早く実現させ、様々な星域で「宇宙海賊連合」を結成してたのである。
皮肉な事ではあるが、各星系を政治的に歩み寄らせ、恒星間ネットワークを形成させた要因の一つに、宇宙海賊連合の脅威があった事は否めない。
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宇宙海賊連合の装甲艦「モンプ」
チャトラム艦隊から離反し、海賊に転向した艦と推測される
■■サタゼウス事件■■
惑星サタゼウスは、元はチャトラム星系に属していたが、ゴゴー軍団の壊滅による銀河崩壊時に放棄されていた。
数十年にわたり無人惑星と思われていたが、宇宙海賊連合が密かに要塞化を進めていたのである。
サタゼウス事件は、サタゼウスを拠点とする宇宙海賊連合が、TDFのテムズ級巡洋艦アガノに偽の救難信号を発した事から始まった。
通常のテムズ級巡洋艦であれば、惑星軌道上から偵察機と救命艇を発進させていたはずである。
しかし、アガノはそれらの艦載機を搭載していなかったため、直接地表に降下し、海賊の砲撃により撃沈された。
アガノは通常の巡洋艦ではなく、レパント級コルベット「トラファルガー」の母艦であり、艦載機を全く積んでいなかった。
海賊の目的はトラファルガーの強奪であり、アガノが地表に降下せざるを得ないことを見越した上で、救難信号を発信したのである。
海賊が自らの拠点であるサタゼウスにアガノをおびき寄せたのは、彼らにとって大きな賭けであった。
サタゼウスの地表からでなければ、奇襲攻撃で巡洋艦を沈める事はできず、万が一撃沈に失敗すれば、サタゼウス基地の放棄を意味するからである。
しかし、レパント級コルベットの強奪は、そのリスクを冒す価値があった。
アガノの誘導、撃沈、そしてトラファルガーの強奪計画。それが「サタゼウス事件」である。
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テムズ級巡洋艦「アガノ」
テムズ級は当時のTDFで最も量産された巡洋艦である
■■レパント級コルベット■■
コルベットは全長20〜30mの小型艦艇である。
サイズが宇宙戦闘機とほぼ同じでありながら、艦艇として位置づけられているのは、短距離ながらワープ航行が可能であること。
そして戦闘機とは比較にならない、極めて高い戦闘能力を持っていることが理由である。
コルベットは単艦で敵艦隊に突入し、敵主力艦を撃破し、陣形を混乱させる事を目的とした特殊艦である。
戦艦ですら困難な任務が広く喧伝された為「突撃殲滅艇」の異名を持つ事となった。
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レパント級コルベット「トラファルガー」
同形艦も歴史上の海戦から命名されている
レパント級は地球とチャトラムの共同開発により生まれたコルベットである。
胴部は細い中央部と、そこから張り出した、かぎ爪状の船体で構成されているが、これはチャトラム製兵器に見られる特徴である。
レパント級の全長は24m。標準型の単座コルベットである。
独特な船体の形状がアクロバティックな戦闘を得意としている。
トラファルガーはその特性ゆえに、宇宙海賊に狙われたのである。
コルベットは機動力と攻撃力に特化しているため、防御力が非常に低い。
さらにサタゼウス事件では捕獲阻止のため、トラファルガーは被弾時に自爆する装置を作動させていたため、実質的な防御力は皆無であった。
また、レパント級に限らず、コルベットは船体の機構が精密なため、生産性も悪い上、整備に大きなスペースを必要とする等の欠点を持っている。
特に巡洋艦はコルベットを一隻搭載すると、ハンガーに余裕がなくなり、その他の宇宙機を積むことができなくなってしまう。
しかし、長距離ワープが可能で、あらゆる任務をこなす事ができる巡洋艦と、攻撃力に特化したコルベットの相性は非常に良く、現在でも多くの巡洋艦がコルベットの母艦として運用されている。
サタゼウス事件ではその編成が裏目に出たものの、コルベットの攻撃性能の高さを実証する事にもなった。
しかし、海賊側はあらかじめトラファルガーの武器管制システムをロックする事で攻撃性能を低下させていた。
当時のTDFの機密は、少なくともトラファルガーに関する限り、海賊連合に筒抜けであった。
トラファルガーは戦闘を開始するはるか以前から、絶望的な状態にあった。
かくして、トラファルガーが全ての能力を発動させるためには、敵が構成する各艦隊の旗艦を破壊する必要があったのである。
※この記事は信頼性についての検証が必要です。
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