同人ゲーム製作の心理学 第10回
■■完成しない心理 その3 禁止令とは■■
「人生脚本」に続き、交流分析心理学より「禁止令」の話をします。
最初の構想から離れて、結局、話が専門的になってきてますがついて来て下さい。
お願い!
「禁止令」とは、「やってはいけない」、または「しなければならない」
という形で自分が自分自身に与える無意識的な命令です。
これも幼児期に人格が形づくられる時期に親から与えられる言葉や仕草を受けて生まれます。
たとえば、病気の時に優しくされた時、
「体が弱ければ、自分は生きていていい」
と感じる子供がいます。
そんな場合
「健康であるな」
という禁止令が生まれます。
私達は、子供の頃には卓越した「場の空気を読む能力」を持っていました。
自力で生活できない無力な子供は、家庭内にいて、保護者に愛され、生きるために、
その場の空気を読む事が生きるために必要だったのです。
大人に成長した後でも子供の頃の禁止令は残り、自分の行動指針の元になっています。
前々回にも書きましたが、私達は年齢も環境も異なるのに、
生きる知恵として子供の頃に得た経験則に無意識に従ってしまう事があるんです。
−−−
ゲームが完成しない心理として、直球で考えられるものは、
「成功するな」=「成し遂げるな」
という禁止令です。
これは、親が嫉妬深かった場合、生まれやすいと言われています。
子供の成功を喜ばない親はいないと言っても良いでしょう。
しかし、親も人間ですから無意識のメッセージを心の奥に隠して生きています。
子供が「見て見て〜!」と自分の成果を見せた時に、
ふと、親が怪訝な表情を見せてから(本人は気づきません)、「凄いね!」と誉めた場合でも、
子供は親の表情を見逃しません。
なにせ、子供は空気を読む達人ですから。
その時に
「成功するな」
と、子供は感じるかもしれません。
成功する→愛を失う→生きていけない
と、シンプルに考えてしまうからです。
また、子供が自分一人で何かできなかった時、嬉々として手伝ってれる親がいます。
もちろん、それは親の愛情あっての事です。
しかし、そこに親の「あなたを世話できるから、私は価値がある」という、
裏のメッセージ(これも、親が子供時代に得たものです)が込められていた場合、
その体験が、やはり
「成功するな」
という、禁止令の元になります。
「成功するな」の禁止令を持っている人がゲームを作る場合、ゲームが完成してしまったら「成功」してしまいます。
「生きるためには成功してはいけない」という幼い自分が必死に得た生存術が、完成にブレーキをかけてしまっている可能性があります。
−−−
また、「成功するな」の禁止令にプラスして、
「努力しろ、怠けるな」
という禁止令が働く場合があります。
これは、ゲームを完成させる助けになりません。
「努力すれば、完成するんじゃないの?」
となるのが普通の展開ですが、
これが
「努力しつづけろ」&「成功するな」
というコンボが繋がると、
「完成しない→努力する余地がある→完成しない→努力する余地が……」
という、ループが発生し、デスマーチの状態が続く事になります。
商業作品の製作には、作り手の心理に関わらず納期や予算といったドライな状況がコントロールの効果を(良くも悪くも)発揮します。
しかし、同人ゲームの場合はその辺が曖昧になるので、個々の心理状態に振り回されて暴走する場合が多いのです。
そんな困った現実を見つめつつ「禁止令」も次回に続きます。
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