同人ゲーム製作の心理学 第9回
■■完成しない心理 その2 勝者の脚本・敗者の脚本■■
前章からの続きです。
人生脚本には
「勝者の脚本」 ……目標を達成する
「敗者の脚本」 ……目標を達成しない。
「非勝利者の脚本」……目標を持たない。挫折しないが、成功もしない
があります。
勝者、敗者と書くと、単純に勝者は「金持ち」、敗者は「貧乏人」等と思われるかもしれませんが、
世間的な価値基準とは関係ありません。
「貧しくても自由でありたい」と思う人が、会社で大出世して「金持ちでも余暇が無い」生活を耐え忍ぶ事になれば、その人は敗者です。
「私は○○を成し遂げる!」と目標を立てて、ことごとく挫折した人が、
「今度はゲームを創る」という目標を立て、結局それも完成しなかった場合、
「敗者の脚本」が深層心理にあると考えてもよいでしょう。
敗者の脚本の持ち主も、勝者の脚本の持ち主も、目標を持つ事は同じです。
それを見分ける方法は「どうやって目標を達成するの?」と聞いてみる事だそうです。
自問自答でも良いでしょう。
「まず、1000万円ためる」とか、「有名人のコネクションを持つ」等、勝利の鍵を一つに絞る人。
「何が正解か分からないし、上手くいくまで、いろいろやってみる」と、複数の勝利の鍵を持つ人。
勝者の脚本の持ち主の答え、敗者の脚本の持ち主はそれぞれどちらでしょうか?
正解は、前者が「敗者の脚本」の持ち主、後者が「勝者の脚本」の持ち主です。
「え? あまりにも決めつけすぎなんじゃないの、
目標への手段を決める事が成功の道って、よく言うじゃないですか?」
と、僕は思ったんですが、ちょっと考えてみると納得のいく話でした。
正解が一つだと思っている人は、それが上手く行かなければ「失敗→即敗北」の道をたどりやすいわけです。
正解が複数あると思っている人は、何度失敗してもその後も成功するための様々な手段を残しています。
一般に流布している成功談は、あくまで上手く行った例の一つでしょう。
ポーカーに例えると、
「俺はロイヤルストレートフラッシュしか狙わないぜ! だってそれが最強だからな」
という必勝法にこだわるプレイヤーが勝てるわけはありません。
「どんな手札でもやり方次第で勝てる。それに、大事なのは負けた回数よりも、結果的に収支をプラスにする事だよ」
と、思っている人の方が強いでしょう。
−−−
ゲーム製作がストップしてしまった、またはゲーム製作は進んでいるが、
自分の作業だけがストップしてしまった背景には人生脚本が絡んでいるかもしれません。
自分がこだわっている「勝利の鍵」を検討してみると良いでしょう。
勝利の鍵が「自分が全てにおいて納得がいくゲームを創る事だ!」しかないのであれば、
「全て」ではなく、納得すべき点を絞ってみるのはどうでしょうか?
また、絞ったとしても。
「納得のいくシナリオを創ることに絞ろう!」
↓
「納得のいくシナリオが描けない!」
↓
ゲーム未完成。
では、やはり同じことです。
「勝利の鍵」の数をクローズアップしてしまいましたが、これはあくまで脚本チェックの方法の一つです。
それは、人生脚本そのものではない事に注意して下さい。
脚本は、前章の「目上の人と対立する」等の行動パターンに表れます。
今回、脚本のチェックをテーマに挙げたのは人生脚本に気づく事で、
自分の生き方をそのものを変えられるという事です。
−−−
脚本は書き変える事ができます。
そのためには、まず、自分の脚本に気づかなければなりません。
しかし、それは簡単な事ではありません。自分が幼い頃から、「当たり前だ」と思って続けてきた習慣ですから。
自分にとって当たり前の事は、他人から見て常軌を逸していても、本人には分かりません。
しかも「脚本」は無意識のうちに発動するものです。
「敗者の脚本」がいつ発動しているのか、自分では分かりません。
自分が気づかなければならない相手なのに、自分には見えないのです。
ただし、ゲーム創りがストップしている人達には大きな利点があります。
それは「ストップしている原因に「敗者の脚本」がからんでいるかもしれない」
という大きな手がかりを持っているからです。
自分が挫折している事が、かえって気づきを得る大きなチャンスとなるんです。
おお、ヒーロー物っぽい!!
自分が無意識に行っている習慣を、独力で意識し、気づけるという事は、
心理学を学んでいる者から見れば、非常にまれなケースです。
それだけに挫折に向かい合っている人には貴重なチャンスが与えられているわけです。
ゲーム創りを通して人生脚本を変える事ができたのなら、その経験はその後の人生全てに影響を与えます。
自分自身と真剣に向き合っていけば、今後の生き方そのものを変えていく可能性があるんです。
−−−
「人生脚本」編で2回も使いましたが、完成しない心理の裏には他にも法則があります。
次回は「禁止令」について説明します。
人生脚本にピンと来なかった人もこの後の章で思い当たる事が出てくるかもしれません。
そんなわけで、このネタはまだ続きます!
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