同人ゲーム製作の心理学 第6回

■■やる気グラフ■■

今回は世界のゲーム製作の基本的な精神的変遷について書きます。
自分のゲーム製作の経験や、数々の製作者のインタビューやクロフォードのゲーム論等のコラムを読み、共通点が見えてきました。
同人、大メーカー、小メーカー、名作も大作も駄作も同じ道をたどっているようです。

その道筋を今回は「やる気グラフ」を使って説明します。




まず、「アイデア出し開始期」です。ちょっと震えてます。
まだ面白くなるかどうかがはっきりせず、自信が持てないからです。




しかし、アイデアに確証が持てた途端、一気に上昇します。ノリノリ期です!
「俺(達)天才ー!!」
との想いが全身を駆けめぐっている時期です。
ゲーム製作の醍醐味の一つと言って良いでしょう。




ところが、ある程度出来上がってくると、
「意外と面白くないなあ……」
という点が明らかになってきて、ちょっと意欲が下がります。




その少し下がった意欲は、自信を喪失させたり、スタッフのモチベーションの差を生み出したりします。
そうなったら、あとは急降下!
グダグダ期に突入します。

これはどのゲーム開発の現場でもそうなるようです。
ゲーム製作のベテランでもこの時期はありますし、初心者も同じです。
製作者の質に関係なく訪れるわけです。
しかし、その後、どうするか。それが、製作者の質の決定的な違いとなります。
この先に、分岐点があるのです。

この時期が来たら、私達はゲームを完成させるための2つの道を選べます。

一つは  「悔し涙を流す道」
もう一つは「悔しさを避ける道」

それは、完成まで修羅場を経験するか、しないかで決まります。




こちらは修羅場の無い道です。
ダラダラと停滞したまま義務感で製作を進めます。若干上昇するのは、完成が見えると少しは、やる気が上がるためです。
別バージョンに「ゲーム創りを止める」がありますが、それは青線が無いものと思って下さい。




こちらは修羅場のある道です。
ゲームを少しでも理想に近づけるため、最大限の努力をします。
そして、努力をすればするほど、災難がふりかかってきます。

なぜでしょうか?
理由があります。

たとえば、遅刻しても平気な人にとっては、列車の遅延はかったるい程度です。
しかし、遅刻しない努力をしている人は、列車の遅延は大きな災難になります。

努力すればするほど、落ち込んだ気持ち、不安、さらに外的なトラブルを全て抱え込みながら、理想のゲームの完成を目指す事になるわけです。

−−−

ついにゲームが完成しました!
完成した作品を見ると、ノリノリ期の絶頂で描いた理想と、現実のギャップが生まれます。




青い道は、完成度を上げる努力をしなかった分、理想とのギャップが大きくなります。
完成しなかった場合は青線すら無いので、理想とのギャップはグラフからはみ出します。




赤い道は、理想に少しでも近づこうと努力をしています。
しかし、ほとんどの場合、ギャップが完全に埋まる事はありません。
小さなギャップがどうしても生まれてしまいます。

−−−

さて、悔し涙を流す道はどちらでしょうか?

「畜生! あと少しで本当の傑作になったのに!」
と、涙を流すのは赤い道を選んだ人です。

青い方で味わうのは、悔しさよりも脱力感の方が上回るでしょう。
悔しい涙の代わりに、さまざまな言い訳が浮かんでくるはずです。
完成しなかった場合も同じです。

−−−

「グダグダ期」の存在。
つまり、モチベーションの低下はゲーム創りの最大級の問題と思われがちですが、それは問題というより、起きて当然の現象です。

「ずっと起きていると眠くなる」
「夏は暑すぎ、冬は寒すぎる」
「水を飲まないと死ぬ」
という事は人生の大問題ですが、あまりにも当たり前すぎて、私達はそれほど問題と思わず 「まあ、しょうが無いよな」
と受け止めてます。

グダグダ期が到来した時も落ち着いて受け止めましょう。

「モチベーションの落ちるオレって何てダメな奴なんだ」
と自己否定する事は、
「ここんとこ毎日、どんどん寒くなるぞ、何故だ? オレ根性無いのか!?」
と悩むのと同じです。

寒くなったら、
「ああ、冬が来たか。春まで外出が辛いな」
と思うように、モチベーションが下がっても、
「ああ、グダグダ期が来たか。しばらく辛い思いをするな」
と自信を持って受け入れましょう。

それが、最終的にゲームのクオリティを決める重要なきっかけとなります。


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