同人ゲーム製作の心理学 第4回

■■創りたくない!■■


基本的にハイペースでゲーム製作をしているASTRO PORTですが、それでも手が動かせない時はあります。
心は焦って仕方がないのに
「今日は1ドットも打ちたくねえ〜!」
と、ネットでブログを巡回し、巡回先がなくなると、特に興味のない情報まで読み続けて時間を潰してしまう。

やる気がないというよりは「やらないパワーを全開にしている」としか思えません。
自分の中のどこから停止エネルギーが湧いてくるのか不思議になります。
このエネルギーを物理的に利用できたら、蛍光灯くらいはつけられる…… いや、ご飯くらいは炊けるんじゃないのか?
このエネルギーを日本中から集めたら使徒やベジータを倒せるだろうか?
実にもったいないです! 特に上記のように不毛な事を考える事が。

僕の場合、やらないエネルギーは1ドット打つと開放されますが、本当にそこまでが長いです。
僕は、やる気がある時は、まず音楽をかけてからドットツールを立ち上げて準備を整えてから作業を開始します。
やる気がない時は音楽もかけず、とりあえずツールだけ立ち上げて、やろうとしたふりだけはしようとします。
ところが不用意に1ドット打ってしまったために、音楽をかけそびれたまま、ぶっとおしで作業してしまった事が沢山あります。

なんだ、走り出せば一直線じゃないか……

やらないパワーに満たされてる時は「とりあえず、ツールだけでも立ち上げてみる」事をおすすめします。
それで運よく体が動けば万歳です。

ツールを立ち上げても「やらないパワー」が一向に衰えない場合もあります。
その時、ネットでつまらない情報を漁るのはあまりに時間の無駄ですね。
やらないパワーが「ツールを立ち上げないレベル」まで行っているなら、
「今日は製作準備の日! 資料とアイデア集めだ!」と決めて、積みあがっているゲームや録画しっぱなしのアニメでも消化しましょう。

同じ罪悪感にかられるなら、少しでもマシな時間のつぶし方をした方が得ってもんです。

溜まった「やらないパワー」は「不幸力」となります。
そして、その不幸力は、ある時「やる気パワー」に変わり、ビックリするほどの力を発揮します。
その時を待ちましょう。

「今日は製作準備の日!」を毎日毎日繰り返した結果、何もしない事が生活の一部になってしまい、
「本当はやらなきゃいけないんだけど……」という気持ちすらなくなってしまう事もあります
「何もしない事」がご飯を食べるのと同じくらいの日常になったら、やらないパワーも不幸力も発生しません。
もし、そうなったら本当に止める潮時です。

でも、それは決して悪い事ではありません。
「創作しなくちゃダメだ」という見かたは、あくまでクリエイター視点の狭い価値観です。
「創作なんてしなくいい」という価値も等しいんです。
ですから、創作から離れる事に罪悪感を感じる必要はありません。
やりたくもない趣味を続けなくてもいいんです。

ただし、複数でゲームを創っている場合は、仲間達としこりを残す止め方はお薦めしません。
それをやったら、本来感じなくても良いはずの罪悪感がつきまとってしまいます。
せめて現在関わっている物は最後の仕事として任務を達成させましょう。
そうでないと虚無感だけが残りますから。

−−−

やらないパワーとは異なるタイプの障害にぶつかる時もあります。
「もうゲームなんて創りたくない」「絵なんて描きたくない」「シナリオなんて」「作曲なんて」 ……もう嫌だ!!!
と思いつめる障害です。

やらないパワーは「やらなきゃいけないと思っているのに体が動かない」ですが、
これは「やらなきゃいけない」が「やりたくない!」のレベルに上がっています。

そうなった人に僕はこの一言を伝えたいです。

「真の創作の入り口にようこそ!」

基本的に創作は楽しいです。天気の良い日のハイキングのようなものです。
しかし、真面目に創作を続けていれば、必ず壁にぶちあたります。
壁にぶちあたったら、どうするか?

止めるか、登るしかありません。

壁を登る人は、もう「ハイカー」ではありません。
「クライマー」と呼ばれる人になります。

チラシの裏に落書きをしている子供は「もう、落書きは嫌だ!」と思いません。
創作が嫌になるほどの大きな壁にぶつかったという事は、あなたが真剣な創作の入り口に立ったという事です。

「好きだった事が嫌いになる」 ……それは「超不幸力」の源です。
嫌いになった自分に誇りを持って、泣きながら、そしてニヤリと不敵な笑みを浮かべながら、もう一度創作を始めて下さい。

真剣になってやっている事ならば、美味しいところだけつまみ食いするような「ずっと楽しい」状態は続きません。
どんな分野でも自分が真剣に取り組んでる事は、一度、嫌いになってからが本番だと僕は思ってます。

創作が嫌いになって、離れるのもありです。
創作から一旦離れても、あまりの退屈さに創作の道に戻ってくる人も大勢います。
勇気を出して戻ってくる人もいますし、気がついたら戻っていた人もいます。

僕ですか?
僕は「カウンセラー」と「クリエイター」の両方の世界を出たり入ったりしています。

最近になって、ようやく両方の崖を一緒に登る方法を見つけだしつつありますが(二つの壁のすき間に手足をかけて登る感じ)、
いつまでたっても中途半端な奴である事に変わりはありません。
このコラムはそんな自分の器用貧乏なジョブスキルを活かすために立ち上げたのが真相です。


次へ

前へ

目次へ

ASTRO PORT 入り口へ