コスモ心理研究所-0305-

■■自己一致って何だ?■■


博士
さて、今まで「受容」「共感」を学んできたね。
この姿勢が相手の実現傾向を引き出すというのが、ロジャースの考えなんじゃよ。

ここ子
はい! この2つに気を使って、あたしも人の話をよく聞けるようになりたいです。

博士
うんうん。そう言ってもらえると、ワシも嬉しいよ。

しかしな、受容しよう、共感しようと意気込むと、
思わぬ落とし穴にはまる事があるんじゃよ。

ここ子
ええっ、落とし穴!?

博士
そうなんじゃ。
意気込みが強すぎるあまり、
自分自身が相手に対して「受容」や「共感」ができていないのに、
それに気づかない事があるんじゃよ。

ここ子
まさか、そんなぁ〜
気づきますよ。自分の心なんですから大丈夫! 絶対平気!

博士
いやいや。ワシらは、どこまで行っても人間じゃ。
どんなに親身になって相手の話を聞こうとしても、
相手に反感を覚えたり、自分に自信が持てなくなったりしてしまうものなんじゃよ。

ここ子
いえ! 心配無用です!
そんな気持ちになっちゃいけないと自分に言い聞かせて、努力と根性でカバーします。

トーバー
ここ子さん、今回はなんだか変ですね。

ここ子
変じゃなくて、変わったんだよ!
あたしはすぐにでも、強くて優しい理想の人になりたいんだから。

トーバー
それで妙にはりきっていたんですか?
気合が空回りしている気がしますが。

ここ子
え? あたし空回りしてる?!

トーバー
大回転。ウルトラCです。

ここ子
うーん。今回はトーバーに指摘されっぱなしだなあ。

でも、たしかにそうかも……
共感をクリアしたのが嬉しくて、調子に乗りすぎてたね。
気をつけなきゃ。

博士
うんうん。
相手の相談に乗る時は、そうやって自分の気持ちに気づいている事が
とても大切なんじゃよ。

ロジャースはこれを「自己一致」と呼んでいるんじゃ。

トーバー
自己一致ですか……
つまり、自分の本当の気持ちと、自覚している考えが一致しているという事ですね?

博士
そうなんじゃ。
この「自己一致」は「受容」「共感」と並ぶ、とても大切な要素なんじゃよ。

受容、共感は基本じゃ。
しかし、それができない時は、できない自分を認める事も必要なんじゃよ。

相談者にありのままの自分を気づいてもらおうと思うなら、
こちらも、ありのままの自分に気づいていなければな。

ここ子
やっぱり、自分の気持ちに気づく事って大切なんですね。

トーバー
「感情への気づき」や「防衛機制」で学んだ事が役に立ちそうですな。

ここ子
心理学って互いに繋がっているんだなあ。

トーバー
博士。質問があります。

相手の話を聞いている時に、自己一致していたおかげで、
自分が受容も共感もできない、不安定な気分になっている事に気づいたとします。

しかし、それに気づいた後は、どうしたら良いのですか?

博士
そうじゃなあ。それをどうにかするのは
とても難しいんじゃよ。

ここ子
そんなあ、せっかく自己一致の大切さを教わったんですから、
簡単な対処法を教えて下さいよ。

博士
では、誰にでもできて、相手や自分の為になる方法を一つ教えよう。

ここ子
待ってました!
で、その方法は?

博士
それは「いったん相手との話を止める」ことじゃ。

ここ子
そんなあ! ずるい!
第一、それをやったら相手に悪いですよ。

博士
いやいや。
自分がイライラしたり、不安になったりしているのに、
そのまま話を続ける方が、相手に対して良くない行為じゃよ。
もちろん、自分自身に対してもね。

ワシもよく経験したのじゃが、そんな状態になってもむきになって
話を続けた事もたくさんある。

じゃが、そういう時は話が際限無く暗くなったり、
相手に対して怒りをぶつけてしまったりして、
ロクなことにならなかったよ。

ここ子
まあ…… そういう時はあたしもそうなっちゃうかな。

博士
そんな時には、相手に対して誠意を持って、
今は話を聞けない事を伝えて、一休みして話題を変えて、落ちついてから話をするか、
その時は別れた方がずっと良いんじゃ。

無理をして話を続けるよりも、お互いが冷静になった後で話をした方が、
ずっと良い結果をうむものじゃよ。

ここ子
そうか、話を途中で切り上げるのも優しさなんだね。

トーバー
私達ならば話を切り上げても構わないと思うのですが、
プロのカウンセラーはどうしているのでしょうか?

やはり、途中で話をするのを止めてしまうのですか?

ここ子
まさか、止めないでしょ?
第一、プロならば、いつだって心は安定してるはずだよ。

博士
いやいやいや。

カウンセラーだって人間だからね。

カウンセラーも、カウンセリングの最中に
感情が乱れる事はあるんじゃよ。

ここ子
ええ!?
じゃあ、その時はどうするんですか?

博士
カウンセラーは、自分の不安定な気分に気づいたら、その時の感情を覚えておく。
そして、それは意識の隅にどけておいて、カウンセリングを続ける。

トーバー
カウンセラーは話をきちんと続ける事ができるのですね。

しかし、感情を覚えておくのは何故ですか?

博士
カウンセリングが終わった後で、なぜ自分がそんな気持ちになったのかを、
自己洞察するためなんじゃ。

相談者に対して、受容や共感ができなくなった理由を考える事によって、
その場では気づかなかった事が見えてくる場合があるんじゃよ。

ここ子
そっか〜!
何が起きても自分の感情を乱さないのがプロじゃないんだ。
自分の感情が乱れても上手く対処できるからプロなんだ。

トーバー
なるほど。人生相談はカウンセリングとは異なり、
相談者との意識のずれが生じても気づきにくいのですね。

人生相談にも「受容」「共感」「自己一致」の3つの態度が
必要だったという事なんですな。

博士
そうなんじゃ。
この3つの態度を念頭におく事で、初めて本当の相談になるんじゃよ。

ここ子
そっかー。
そういえば、あたしが友達に意見してる時は、受容も共感もしてなかったし、
自分の価値観を押しつけたいっていう気持ちに気づいてもいなかったんだね。

博士
うん。それはよくある事なんじゃよ。
ワシももともと説教が大好きな人間じゃったからのう。
お互いに気をつけたいもんじゃな。

トーバー
ロジャースの考えはだいたい分かりました。

ロジャースの創始した「来談者中心療法」というカウンセリング技法も、
これらの考えがもとになっているわけですが、本当に効果があるのでしょうか?

ここ子
そうだよねえ。理屈を聞いただけで、
まだ実際のカウンセリングがどんなものだか、ピンと来ないな。

博士
よろしい。では、架空の相談者を想定して、
カウンセリングのシミュレーションを行ってみよう。

ここ子
わあ! 面白そう!
ねえねえ! 相談者はどんな人ですか?

博士
宇宙猿人ゴリ氏
職業:科学者
趣味:地球征服
じゃよ。

トーバー
ほほう。そうきましたか。

ここ子
ほほう、じゃない!
ちょっと待ってよ!
もう、何が何だかさっぱりですよ!!

博士
ハッハッハ! お楽しみに。

ここ子
不安ですって!



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