コスモ心理研究所-0306-

■■宇宙猿人ゴリ対コスモ博士■■


トーバー
さて、これから博士にカウンセリングを行ってもらうわけですが、

相談者の詳細はインターネット検索で調べると良いでしょう。
「宇宙猿人ゴリ スペクトルマン」
のキーワードでどうぞ。

トーバー
では、シミュレーションスタート!



ゴリ
私は惑星Eから追放されてしまってな。
それが悔しくてたまらんのだ!

博士
自分の故郷から追放されたのが悔しくてたまらないんですね?

ゴリ
ああ、この悔しさは、忘れはしないぞ!!

博士
悔しさが忘れられないのではなくて、
忘れたくないんですか?

ゴリ
その通りだ。
私は悔しさを忘れずに生き続けるぞ。

博士
あなたにとっての生きる目的は何なのでしょうか?

ゴリ
私の悔しさを晴らすことだ!

そして、私は宇宙を旅している時に発見した、
この地球を必ず支配すると心に誓ったのだ。

博士
地球を支配する事で、故郷を追放された悔しさを
生きる力に変えようとしたんですね。

ゴリ
ああ、追放された悔しさだけではないぞ。
何と言っても、宇宙の奴らは、この私の偉大さを全く理解しようとせんのだ!

博士
周りが自分の偉大さを理解してくれない事にイライラするんですか?

ゴリ
そうだ。自分の理想と目的を持って、強く生きているはずなのに、
「宇宙の敵」と言われると、身震いするほど腹が立つのだ。

博士
自分の生き方が理解されないばかりか、宇宙の敵とまで呼ばれてしまった。
その事で腹が立つんですね。体が震えるほどに。

ゴリ
ああ、だがな、誰にも負けない頭脳があれば、どんなものにも恐れはしないぞ。
万能椅子の威力を使って、人類征服を企てるのだ!

博士
私にはちょっと分からない点があるんですが……
地球人類を征服したら、あなたの悔しさは晴れるんでしょうか?

ゴリ
…… 晴れないだろうな。
そもそも、私の怒りは地球人類に向けられたものでは無いからな。

博士
晴れないのに、どうして地球を征服したいんでしょうか?

ゴリ
…… 分からんよ。
だが、そうでもしなければ、誰が私を受け入れてくれるというのだ?

博士
あなたの本当の目的は人類征服ではなくて、
皆に自分を受け入れてもらう事ではないかと私には思えますが、
どうでしょうか?

ゴリ
ああ…… その通りだ。
私は生まれてから誰にも受け入れられずに育ってきたからな。
本当は、地球を征服しても、どうにもならん事はうすうす分かっていたよ。

博士
どうにもならない事は分かっていた。でも、認められなかった。

ゴリ
認めたところで、どうなるというのだ!

博士
現実を認めても、どうしようもないと思ってるんですね。

ゴリ
私にどうしろと言うのだ!?
どうすれば自分を受け入れてもらえるかだけは、
この私の頭脳をもってしても分からんのだ!

博士
周りに自分を受け入れてもらうために、どうしたら良いのか……
考えても、考えても答えは出なかったんですね。

ゴリ
ああ、それは耐えがたいほどの苦しみだった!

博士
耐えがたいほどの苦しさを抱えて、今まで必死に生きてきたんですね。

ゴリ
ああ、いつも私は孤独だった。
だから、そうやって生きていくしかなかったのだ。

博士
ずっと孤独だったんですね……
今まで自分がどう生きれば良いのか、一人で考えるしかなかった。
でも、答えは出なかった。

それは本当に苦しかったでしょうね。

ゴリ
ああ…… 苦しかった。もう孤独には絶えられない……

博士
あなたはもう孤独ではありませんよ。
これからは私もあなたの力になりたいと思っています。
どうしたら、ご自分の苦しみを解消する事ができるのか。
よかったら、これから一緒に考えていきませんか?

ゴリ
うむ。そうすることにしてみようか。
それまでは人類征服計画は取り止めるとしよう。

−完−



博士
と、いうわけで、
この先もカウンセリングは続くことになるわけだが、
とりあえず、シミュレーションは終わりにしよう。

ここ子
わあ! 最初は(いろんな意味で)どうなる事かと思ったけど、
地球征服を止めちゃいましたね。

トーバー
子供やスポンサーはガッカリですな。

それはともかく、
興味深いのは、今の話の中では、相談者に対して
「地球征服は悪い事だから止めろ」とは一言も言いませんでしたね?

ここ子
うん。人生相談なら絶対に言うよね。

博士
それは相談者の行動の良し悪しを
カウンセラーの価値観で計るという事になるからな。

「あなたが悪い」と言った時点で、相談者は共感されていないと感じて、
心を閉ざしてしまったろうな。
そうなったらカウンセリングは失敗じゃ。

ここ子
それよりも、相談者が良い方向に向かうことを信じたんですね。

トーバー
実現傾向を信じたわけですな。

博士
これはあくまで一例じゃ。
また、これからがカウンセリングの本番とも言えるが、
このようなケースでは、相談者の問題が解決するまでには、
まだまだ長い期間がかかるんじゃ。

ここ子
自分を前向きな方向に変えていくのって大変なのね。

博士
今回のシミュレーションのように、相談者の話を
じっくりと聴く事を「傾聴」と言うんじゃ。
この傾聴が来談者中心療法の基本なんじゃよ。

ここ子
ただ話を聞けば良いわけですか?

博士
いやいや。ただぼんやりと話を聞くわけじゃないよ。
相手を共感的に理解しようとしながら、全身全霊をこめて積極的に話を聴く。
それが傾聴なんじゃよ。

ここ子
「聞く」じゃなくて「聴く」なんですね?

博士
そうなんじゃ。
「聴く」という表現は、「聞く」に比べて、しっかりと耳を傾けるという
ニュアンスがあるじゃろう。
そこを感じとってもらえると嬉しいのう。

トーバー
「受容、共感、自己一致」を念頭におくわけですから、
まさに「聴く」という表現が適切なんですね。

ここ子
あたしが悩みごとを相談しても、相手がすぐにお説教を始めたり、
ちゃんと聞いてくれなかったりすると、こっちも意地をはっちゃうけど、
しっかり聴いてもらうと、自分の気持ちを素直に話せるようになるもんね。

トーバー
傾聴すると、相談者は自分の気持ちに素直になる。

気持ちに素直になると、自己概念が事実と一致するようになる。

自己概念が事実と一致すると、実現傾向が発揮される。

最終的に、相談者は精神的成長をとげ、問題解決能力が増す。
というわけですね?

ここ子
話を聴くって事が、こんな効果を持っているなんて驚きだわ。
ロジャースって凄いんですね!

博士
カウンセリングの技法はいろいろある。
ロジャースの来談者中心療法は、現在ではカウンセリングの
主流ではなくなってきているのも事実じゃ。

しかし「受容、共感、自己一致」は技法、流派を超えて、
全てのカウンセラーの基本的な心がまえとなっているんじゃよ。

トーバー
なるほど。基本を理解した私に敵はありません。
さっそくカウンセリングにレッツトライです。

ここ子さん。私に何でも相談して下さい。

ここ子
えっとね……
あたしがとっておいたケーキがいつの間にか無くなっちゃって、
とっても悲しい気分なんです。

トーバー
ああ、それなら博士が食べてましたよ。

ここ子
本当?!
ありがとう! これで悩みが解決したよ!

博士
ちょ、ちょっと君達、それはカウンセリングというものではないぞ。

ここ子
そうですか。違いますか。
丁度、いろいろと聞きたい事もあるし、
詳しく話してもらいましょうか。

博士
あいたたたた! ヒゲ! ヒゲが伸びる! もしくは無くなる!
助けて怪獣Gメン!

■■第3章 完■■


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