コスモ心理研究所-0204-

■■防衛せずにはいられない-前編-■■


博士
それでは「防衛機制」について説明しよう。

トーバー
防衛機制は自分の心を守るための機能でしたね。

博士
その通り。
防衛機制はイドとスーパーエゴが自分の心を痛めつけないようにするために、
無意識的に発動するものなんじゃ。

ここ子
じゃあ、あたし達の役に立つ機能なんですね。

博士
うむ。防衛機制のおかげで、私達は世の中に適応して生きていけるわけじゃからな。

ただし、防衛機制が強すぎるのも問題があるんじゃ。

トーバー
過ぎたるは及ばざるがごとしですか。
では、時と場合に応じて使うように気をつければ問題無いと?

博士
それが、そうもいかんのじゃ。

防衛機制は無意識下で働くんじゃ。
だからコントロールする事はもちろん、防衛機制が働いているかどうかを判断するのも難しいんじゃよ。

ここ子
とりあえず、良くも悪くもあるって事だけは分かりました。
でも、防衛機制ってどんなものなのかさっぱり分からないですよ。

博士
すまんすまん。
じゃあ、これから防衛機制のタイプをいくつか挙げていこう。


●抑圧

博士
まずは防衛機制の中でも、最も多く使われる「抑圧」からじゃ。

ここ子
どういうものなんですか?

博士
これは不安なこと、嫌なことを無意識の中に押しこめてしまう機能じゃ。

トーバー
気にしなくなってしまうのですね。

ここ子
あたしが掃除をしないでルービックキューブで遊んじゃったのも抑圧のせいかぁ。

博士
その通りじゃ。
また、抑圧にはいろいろなパターンがあるんじゃ。
まず、単純に嫌な事を忘れてしまうというものがある。

トーバー
前々回の、キノコが食べられない人が、キノコの怪物映画を見た記憶を無くしていたというケースですな。

ここ子
あたしがよく忘れ物をするのも抑圧のせいなのね。

トーバー
それは、ぼんやりしているだけでは?

ここ子
違うって! 抑圧だよ! 絶対抑圧!!

博士
抑圧のせいで忘れ物をする場合も無いわけじゃないよ。
仕事が嫌なので、書類を忘れるとか。

ここ子
ほら! 無意識がやってる事なんだから仕方ないわ。
どっちにしても、あたしの忘れ物なんて小さい事だしね。

トーバー
だいぶ防衛してますねえ。

博士
そうそう。抑圧には問題そのものを無視するというパターンもある。
重要な問題なのに、大した事が無いとたかをくくっているうちに状況が悪化する事はよくある事じゃ。

トーバー
事業がうまくいっていない企業や、敗戦続きの軍隊の上層部が楽観的になりがちなのは、このためなんですね。

博士
そのとおりじゃ。

また、抑圧は不安なことに対してだけではなく、欲求を抑圧することもあるんじゃ。

ここ子
例えば?

博士
異性にふられた時に、妙に気分が落ち着いてしまう事なんかがそれじゃな。

ここ子
うっ……! 聞くんじゃなかった…… まあ、どうでも良いけどね。

トーバー
他にはどんなパターンがありますか?

博士
そうじゃな。面倒なことを1日にいくつもやらなければならない時、君達はどうする?

トーバー
重要度の高い順にかたづけていきます。もちろん、同時にできる事があれば、その要素も加味しますが。

ここ子
あたしは…… 何から手をつければ良いのか分からなくなって……
面倒なので寝ます。

博士
と、ここ子君のように寝てしまうのも抑圧の作用なんじゃ。

トーバー
ははあ。ここ子さんが貧乏した時に、いつの間にか寝てしまうのも抑圧だったんですね。

ここ子
また、嫌な話をむし返すんだから。
博士、抑圧はもういいから、次行きましょう!


●逃避

博士
では、「逃避」の説明をしよう。これも防衛機制の中ではメジャーどころじゃ。
これは嫌な事から逃れるために、他の事を始めてしまうことじゃ。

トーバー
掃除中に遊んでしまうのがそれですね?

ここ子
ええっ?! またあたしの話?

博士
自分の不安が大きい場合、酒やギャンブルに浸ってしまったりする場合もある。
これは度が過ぎると大変なことになってしまうぞ。

トーバー
ここ子さんはルービックキューブくらいで済んで良かったですね。

博士
自分の評価が決まることから逃げるという事もある。

ここ子
自分の評価ですか?

博士
例えば、突然具合が悪くなって試験を受られなかったり、自分の成果を発表するのを避けたりする事じゃな。

ここ子
それは逃げたいですねえ。分かりますー。

トーバー
それは試験の結果と自分の価値を同じだと思うから逃避してしまうのではないでしょうか?

ここ子
そうねえ。確かにトーバーの言う通りなんだけどねぇ…… 試験の結果と自分の価値かぁ……

博士
とにかく、逃避も心の安定をはかるために必要なものじゃが、行き過ぎにはくれぐれも気をつけなきゃな。


●投影

博士
さて、君らは他人を平気で嫌いになれるかね?

ここ子
そりゃあ、あたしにも嫌いな人はいますけど、別に嫌うのが平気なわけじゃないですよ。
他人を嫌うのって気持ちが良いもんじゃないし、自分の心が狭くなる気もするし。

博士
そうじゃな。だから多くの人は「私があいつを嫌いだ」と思う心を防衛して、
「あいつが私を嫌っているんだ」と思ってしまうんじゃよ。

トーバー
なるほど、それなら自分を卑下せずに済みますね。

博士
それが「投影」の効果なんじゃよ。

人間は他人の気持ちは分からない。
自分が分かるのは自分の感情だけなんじゃ。

誰かの気持ちが手に取るように分かると思っても、
それは自分の隠れた気持ちかもしれないんじゃよ。

ここ子
うーん。自分の感情に気づく事って、やっぱり大切なんだなあ。

博士
自分の感情に気づくのが苦手な人は、自分の持つ嫌悪感や破壊的な衝動を他人に投影してしまいやすいんじゃ。
そうすると、何でも他人のせいにして、平気で他人を傷つけてしまう事があるんじゃ。

ここ子
投影って怖いですね。

博士
いやいや、投影には夢のある要素もあるぞ。
例えばロマンスは投影抜きでは語れないんじゃ。

ここ子
ロマンスって…… 恋愛のこと?

博士
そう。恋愛じゃ。
自分が「間違い無い! この人は自分に気がある!」と思っている時は、
自分の好意が相手に投影されている場合がある。

ここ子
ふんふん。

博士
また、つきあいを始めた頃は、自分の理想が相手に投影されるので、
実態以上に相手が良く見えたりするものなんじゃ。

ここ子
ふんふん…… って、全然夢が無いじゃないですか!

博士
ま、真の恋愛は投影を乗り越えたところにあるものなんじゃよ。

ここ子
仕方ないか…… 投影でも何でもいいから、まずは素敵な出会いを探すことにするか。

トーバー
どんな人を?

ここ子
白馬の王子様

トーバー
そんな理想を投影される人も可哀想ですなあ。

ここ子
他人の恋愛観にケチつける人は、白馬に蹴られてしまいなさい!

博士
防衛機制はまだまだあるが、続きは次回じゃ。

ここ子
王子様〜!!



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