コスモ心理研究所-0203-

■■イド・エゴ・スーパーエゴ■■

博士
ハアハア……
ずいぶん長い間クモ映画談義をしてしまった気がするのう。

ここ子
ハアハア……
脱線した話が盛り上がるのも、無意識のせいなんですね。

トーバー
私は「アラクノフォビア」は恐怖感の演出においては今一つだったと思いますが、ホームドラマ的な心地よさは評価しています。

ここ子
もう、クモ映画の話は終わり!!

博士
では、フロイトが説いた心のしくみについて、もう少し説明しよう。

フロイトは人間の心はイド、エゴ、スーパーエゴから成り立っていると考えた。
これがフロイトの自我理論じゃ。

ここ子
それは、意識、前意識、無意識とは違うんですか?

博士
そうじゃ。どちらも心の区分なんじゃが、分類法が異なるんじゃよ。
まず、「イド」からじゃ。
イドは無意識下にある、本能的な心じゃ。

ここ子
「本能」ですか? なんか言葉はよく聞くけど、ピンとこないですね。

博士
ぶっちゃけた話、「好き勝手にしたい」という心じゃ。
食べたかったら食べる。眠たければ眠る。泣きたかったら泣く。

トーバー
赤ん坊のようですね。

博士
まさにそのとおり。
赤ん坊の心はイドの塊じゃ。

赤ん坊はおっぱいを飲んでる時に、「健康のために腹八分目にしておくか」とか、
おしめが濡れても、「お袋は昼ドラに夢中だし、泣くのはCMが始まってからにするか」等と考えたりはしない。

ここ子
っていうか、そんな赤ちゃんはイヤー!!

トーバー
赤ん坊の行動原則は、今現在の欲求を最大限に満たすことですからね。

博士
そう。イドはそういった快楽原則に従うんじゃよ。

ここ子
でも、人間はずっと赤ん坊のままではいられませんよね?

博士
うむ。人間は成長する。
成長すると、今までのように本能のままに行動するわけにはいかなくなる。

トーバー
成長すれば、さまざまな世の中のルールに適応しなければならないわけですからね。

博士
そうなんじゃ。人間は何か欲求があっても、現実に即した行動をとるために、それを制御する時がある。
そうしなければ世の中では生きていけないからな。

ここ子
じゃあ、人間は成長するとイドが無くなるのかなあ……

博士
イドは無くならないよ。大人になっても欲求は生まれるじゃろ?

トーバー
イドにはコントロール機能は無いのですから、
赤ん坊は成長すると、コントロール機能を持つ何かが芽生えるのでしょうか?

博士
そのとおり!
人間は成長すると、新たに「エゴ」という心が芽生えるんじゃ。
エゴは自分の中から沸き起こる欲求をコントロールする働きがあるんじゃよ。

君らも色々な理由で欲求をコントロールすることがあるじゃろ?

ここ子
はい。あたしはコーラと牛乳を混ぜて飲みたくなっても、人前ではやりません。

トーバー
新作ゲームが出ても、これは値崩れしそうだと思ったら、2〜3ヶ月買わずにいて、安売りされるのを待ちます。

博士
君らの例えは一般的じゃない気がするが、まあ、それらがエゴの機能なんじゃよ。

トーバー
イドは欲求に従う心。エゴは現実に従う心というわけですな。
では、最後のスーパーエゴとは何ですか?

博士
スーパーエゴは良心や道徳心、正義感に従う心じゃ。

ここ子
ふうん。スーパーマンみたいな心なんですか?
何だかカッコ良さそう!

博士
ところが、スーパーエゴはどちらかと言うと、やっかいなものなんじゃ。

子供の頃は、親からいろいろな道徳を教えられるものじゃな。

ここ子
はい。「ウソをついちゃいけません」とか「真面目にやりなさい」とか。

博士
子供は親の保護無しでは生きていけない。
だから、親の愛情を得るために、親の理想を心の中にどんどん取り込んでいくんじゃ。

そして、良いことをした時は自分で自分を誉め、悪いことをした時は自分で自分を責めるようになる。

ここ子
それじゃあ、ちょっと失敗した時でも、「あたしはダメなんだ〜」って自分を責めたり、
失敗した事を忘れたいのに、なかなか忘れられないのは……

博士
それはスーパーエゴが働いているからなんじゃ。

ここ子
ええー?! それは困りますねえ。
良心が無いのも嫌だけど、細かいことでいちいち凹むのも嫌だなあ……

トーバー
人間は好むと好まざるとにかかわらず、
「好き勝手にやりたい」というイドの欲求と、
「しっかりしなければならない」というスーパーエゴの要求を抱えているわけなんですね?

ここ子
わあ! そんな矛盾を抱えたままじゃあ、心は混乱しまくっちゃいますよ。
何とかして調整しなきゃ。

トーバー
ふむ、調整ですか…。
では、エゴはイドを制御できるんですから、同じようにスーパーエゴも制御すれば良いのではないですか?

博士
その通りじゃ。
エゴの役目はイドとスーパーエゴの両方の要求を調整する事なんじゃよ。

ここ子
でも、あたしのエゴは、イドもスーパーエゴもコントロールしきれていない気がするなあ……
結局、両方の板ばさみになってるだけって感じ。

博士
それはここ子君だけじゃないよ。
誰のエゴもみんな、イドとスーパーエゴの板ばさみになっているんじゃよ。

トーバー
板ばさみになると、心にはどんな影響があるんですか?

博士
例えば、ここ子君がお腹が空いているのにお金が無かったりする。

ここ子
あたしを例えに出さなくてもいいでしょう!
でもホントによくある事なんですけどね。

博士
じゃあ、そういう時、イドとスーパーエゴはそれぞれどんな要求を出すかね?

ここ子
イドは「お腹がすいたよう」「美味しいものが食べたいよう」と要求します。
スーパーエゴは「お金が無いなんて、何てダメなんだ」って自分を責めます。

博士
エゴはそれをどう調整するのかな?

ここ子
とりあえず、安くてお腹がいっぱいになる物を食べる事を選びます。
しょう油ごはんを食べて、一応満足するとか。

トーバー
満足できますかね?

ここ子
ううう…… 本当は満足できないの……
イドは「もっと美味しいものが食べたいよう」とわがまま言うし、スーパーエゴは「やっぱりダメな奴だ」って責めるの……

で、気をまぎらわすためにTVをつけると、そういう時に限って大食い選手権なんかをやってるの……
で、うわああ! と思ってるうちに、いつの間にか寝ちゃってるの……

トーバー
お気の毒です。
とにかく、心の欲求を満たすのは大変なんですね。

ここ子
うう…… あたしって…… あたしの人生って……

はっ!

ちょっと待ってよ! いつもは違うんだよ!
普段はキャビア丼とかフォアグラ鍋を食べてるんだから!

博士
そう。トーバーの言う通り、心の欲求はバランスをとるのが大変なんじゃ。

イドが強すぎると、感情的で衝動的な人間になってしまう。

トーバー
北斗の拳の悪役はイドが強いんですね。

博士
また、スーパーエゴが強すぎると、いつも自己卑下する暗い人間になってしまう。

トーバー
エヴァンゲリオンの主人公はその典型ですね。

ここ子
できれば、どっちも避けたいなあ……
って、あたしの金持ち体験談も聞いてよ!

博士
フロイトはエゴの調整能力を発達させて、現実的で合理的な精神状態を作り出せるようになることが理想であると考えたんじゃ。

トーバー
たしかにそれは理想ですが、それが簡単にできるほど、人間の心は強く出来てはいませんね。

博士
そうなんじゃ。イドやスーパーエゴの調整は非常に難しい。
だから、人間にはその葛藤を無意識のうちに調整して、心を守る機能が備わっているんじゃ。

トーバー
そんな機能があるんですか?

博士
うむ。その名を「防衛機制」と言う。

ここ子君が貧乏すると寝てしまったりする行動も、実は防衛機制なんじゃよ。

ここ子
ビンボー、ビンボー言うなー!

博士
外野がうるさくなってきたので、説明は次回じゃ。

ここ子
外野じゃなーい!



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