コスモ心理研究所-0503-

■■ラショナルビリーフ実践編■■


ここ子
博士〜! イラショナルビリーフをラショナルにするにはどうしたらいいんですか?
トーバーをこのまま放っといたら研究所が崩壊しちゃいますよ。

博士
よし、今回はその点に焦点を絞ろう。
前回と内容が重複することにもなるが、トーバーも聞いてみないかね?

トーバー
まあ、いいでしょう。お伺いします。

ここ子
ほっ、破壊活動が止まったわ。

博士
イラショナルビリーフをラショナルに変えるために、まず必要なのは何かな?

ここ子
はいはい! まずは「気づくこと」です。

トーバー
ふむ。感情も禁止令も、気づかなければ、よい方向に持っていけないのでしたね。
気づくためのポイントはあるのですか?

博士
イラショナルビリーフの定義は、
「自分や周りを不幸にする考え」じゃ。

ここ子
じゃあ、落ち込んでしまったら「あ! これはイラショナルかも」って思えば良いんですね。

トーバー
前回も散々聞きましたが、今回も念を押しますよ。
「たとえ、それが事実でも、イラショナルなんですね?」

私は真実が分かれば、悩みは解決するはずだと思っているのですが。

博士
自分を悩ませている事柄が真実かどうかは全く関係ないんじゃ。
いいかね?

自分に起こった事実を「どう考えるか?」。
それがイラショナルビリーフをラショナルに変えるための重要な要素なんじゃよ。

ここ子
自分の身にふりかかった不幸って、やっぱり自分だけの不幸なんだね。

鳥のフンが頭に落ちて、一日中ブツブツ言ってる人もいるし、
その話を周りにして、みんなと仲良く笑い合う人もいるもんね。

トーバー
真実の追究が問題を解決するのではないのですね?

博士
イラショナルビリーフは、ほとんどの場合、
「事実に合っていない」し、
「論理的でもない」んじゃ。

ただ、悩んでいる本人には、イラショナルビリーフの矛盾に気づくのは難しい。
だから「これは事実だ! 事実なんだからどうしようもない!」と思うんじゃよ。

ここ子
自分の考えにハマっちゃうわけね。

トーバー
私には事実にしか思えない事が、他人から見ると事実と異なるのですね。

ここ子
うん。

トーバー
そうですか……
ここ子さんは私が非論理的な理由で悩んでいると思っているのでしょうね。

ここ子
思ってる、思ってる。

トーバー
しかし、今の私にはどうする事もできないんですよ。
せっかく論理療法を学んでいるというのに…。

ここ子
論理療法を知っても、そんなに劇的に変わったりしなもんじゃないかな。
自分の考え方を変えるのは、それだけ難しいという事なんでしょ?
ねえ、博士。

博士
うむ。自分の考え方がイラショナルビリーフだと気づいても、
そんなに簡単には変えられるものでは無いのう。

トーバー
そうですか。やはりダメですか。

博士
いやいや。難しいから諦めなさいと言っているわけではないんじゃ。

イラショナルビリーフは重たいヨロイのようなもんじゃ。
不便極まりないが、長年着こんでいるから、体に馴染んでいる。
だから脱ぐのが怖いんじゃ。

ここ子
うん。使い慣れたものって、良いもんでも悪いもんでもできれば手放したくないのよね。

トーバー
ビデオデッキ等の家電を新しいものに変えた時、しばらく操作に慣れずにストレスを感じるようなものですね。
たとえ新製品の性能がどんなに良くても、慣れるまでは前の方が良かったと思いがちですからな。

ここ子
自分の考えって、ビデオや携帯の何倍も馴染んでいるんだから、
それを変える苦労は比べ物にならないよね。

でも、どうしたら変える事ができますか?

博士
まずは「決心」じゃ!

ここ子
決心!?

博士
「私はイラショナルビリーフをラショナルビリーフに変えるんだ」と強く思うこと!
これじゃよ。

トーバー
「私は自信が無いので、ラショナルビリーフを持つことはできない」
と思っていたのですが……

博士
まず、そのビリーフを変えると決心する事じゃよ。
それが無かったら、何も変えられんからな。

トーバー
しかし、すぐに変える事は、私には不可能ですよ。

ここ子
べつに、すぐに変えなくてもいいんじゃないの?
焦らなくても、いつか変われば結果オーライじゃないのかなあ。

トーバー
ふーむ。なるほど。
「すぐに」変えるのは無理でも、「いずれ」なら成功率は飛躍的に上がりますな。

イラショナルビリーフを変化させるのは難しい事のようですし、
「すぐに」変える事にこだわるのは止めました。
私にも可能性が見えてきましたよ。

ここ子
トーバー、だいぶ持ち直してきたみたいだね。

他に必要なのはありますか?

博士
あと必要なのは「鍛錬」じゃ!

ここ子
鍛錬!?

博士
自分の心のヨロイは硬いし、造りは複雑じゃ。サビついているところもあるじゃろう。
パーツの取り外しが分からない時もあるじゃろう。

トーバー
イラショナルビリーフは無意味な考え方なのに、
体にしみついてしまっているのは不幸な事ですね。

博士
イラショナルビリーフは本人にとっては無意味なものでは無いんじゃよ。
それは、幼い頃に親から教えられたり、様々な困難から自分を守るために
身に着けざるを得なかった、生きる為の知恵だったんじゃ。

トーバー
戦争の時には役に立つヨロイも、普段は邪魔なだけですからな。
それでも、今まで自分を守ってきたものだから、
外すとなると恐ろしいのでしょう。

ここ子
でも、そこで諦めたら、一生脱げないと……

博士
そう! どんなに難しくても、取り外す鍛錬をコツコツと続けていけば、いつか外せるようになるもんじゃ。
一人が着ているイラショナルなヨロイは一着じゃない。
しかし、一着脱ぐ事ができれば二着目、三着目はもっと楽に脱げるはずじゃよ。

トーバー
いったんはヨロイを脱いでも、放っておくとまた着てしまう事もあるのでしょうね。

博士
うん。歪んだヨロイは嫌な事がある度に少しずつ自分にくっついてくる。
鍛錬していれば、外しやすいうちに外す事ができるんじゃ。

ここ子
うーん。大変そうだなあ。鍛錬ってあたしの苦手分野だなあ。

博士
しかし、ヨロイを着続ける苦労を考えたら、脱ぐための苦労をした方が楽じゃろ?

ここ子
まあ、それもそっか。

いっちょ、あたしも前向きな苦労をしてみようかな。
ね! トーバー。

トーバー
私もですか? はあ……

ここ子
煮え切らないなあ。
でも、すぐに自信がつくもんでもないか。

で、博士。「決心」と「鍛錬」は分かりました。

次は?

博士
いよいよ実践じゃ。
イラショナルビリーフをラショナルビリーフに変える練習をしてみよう。

たとえば「会社をクビになったら」普通はどう考えるかね?

ここ子
そりゃもう、「自分は評価されなかった」「自分は無能だった」「自分の人生おしまいだ」等、
いろいろですよ。
とにかく絶望しちゃうんじゃないかなあ。

トーバー
ふむ。私も絶望的な考えになるのは当然という気がします。

しかし、絶望的になったとしたら、その考え方はイラショナルビリーフなのですね。

ここ子
それじゃ、あとはどうしたら良いんですか?

博士
そのような絶望的な考えに自分で反論してみるんじゃ。
それがイラショナルビリーフをラショナルに変えるという事なんじゃよ。

トーバー
「自分の弱い考えに反逆する!」ですか?
どこかのマンガのセリフのようですな。アルター仙人。

ここ子
それじゃトーバー、
「会社をクビになった」事について、反逆してみてよ。

トーバー
「クビになった事は確かに辛い! しかし、私が能力を発揮できる会社はいくらでもある!」

いかがですか?

ここ子
なるほど、熱いわ! じゃあ、あたしは。

「今まで自分は充分苦労してきた。 しばらくゆっくり休暇を楽しんでみるのも悪くない」

トーバー
ふむ。ここ子さんらしい呑気な考えですが、気持ちに余裕が生まれますな。

ここ子
えへへ。ありがと。
博士、同じ出来事でもいろいろな考えはできるんですね。

博士
ラショナルビリーフには正解は無いんじゃ。
どんなイラショナルビリーフに対しても十人十色の答えがあるんじゃよ。

トーバーが出した、「能力を発揮できる会社を探す」という行動は大変かもしれない。
しかし「もう、お終いだ」という考えに縛られるより、ずっと楽な生き方ができるはずじゃ。

では、他にも問題を出すぞ。
「あたし、料理もお裁縫も苦手なんです。女としてどうかと思います」

ここ子
ああっ! これ、あたしが論理療法の第一回で言ったやつだ。
博士ひどい!

トーバー
では、ここ子さん、さっそくラショナルビリーフにしてみて下さい。

ここ子
ええと……
「女でもお料理や、お裁縫が苦手な人もいる。
 そういう人も魅力的に見えるから、あたしも別な魅力がある!」

トーバー
「家事能力を女らしさと結び付けるのは短絡的であり、今の時代に合わない」
という見方もできますな。

博士
では、
「郵便局や駅で並ぶと、いつもあたしの前の客がもめるので、イライラします」
は?

トーバー
「いつも、というのは事実では無い。不愉快な出来事は記憶に残りやすいだけである
 また、イライラするのは嫌な事だが、耐えられないほどでは無い」

ここ子
「あたしは今まで窓口でもめるべきじゃないと思ってました。
 でも、あたしがもめちゃう時もあるし、お互い様だなと思います」

博士
うん。二人とも好調じゃな。
特に、ここ子君は自分の中の「べき」に気づいたのが良かったね。

自分の中の「べき」や「ねばならない」というこだわりに気づくのは、
イラショナルビリーフをラショナルに変えるポイントになるんじゃよ。

では、最後は
「あたしの前にちっとも理想の男の人が現れません。もうダメなんじゃないかと思います」
じゃ。

ここ子
うわっ! 辛っ!

ええと……
「今まで現れなかっただけで、これからも現れないというわけじゃない。
 ダメなんて事は無いと思います」

トーバー
「理想は自分の成長によっても変化するものです。
 すでに知り合りあっている人が、これからの理想の男性になるかもしれません」

ここ子
うん! そう考えると、なんだか希望がわいてくるね。
論理療法大好き!

明るいラショナル、明るいラショナル
ラジオ、テレビ、な〜んでも、ラショ〜ナ〜ル〜♪

トーバー
ああ、今回はここ子さんが壊れてしまいました。

私の役を取られて、いささか不愉快な気がするのは、
「壊す、壊れるは私の役目であり、他人がやるべきでは無い」
と思いこみのせいだとすれば……

…… どう考えてもイラショナルですな。



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