コスモ心理研究所-0202-

■■トリオTHE意識■■

博士
まず、「意識」の説明から入ろう。
意識しているというのは、どういう状態かね?

トーバー
自分が考えている事を自覚しているという事です。

博士
そう。意識とは、自分で分かっている心の領域のことじゃ。
我々がふだん考えている事が、おおむねこれにあたるな。

ちなみに、心を氷山に例えると、意識は海の上にほんの少し出た部分で、
無意識は海中にある、ずっと大きな部分なんじゃよ。

ここ子
ええっ?! 氷山って下の方が大きいんですか?

トーバー
ここ子さんは驚くところがずれてます。理科の本を読んで下さい。

ここ子
じゃあ、どこで驚くのよ。

トーバー
コホン! では、私が模範回答を。

無意識は意識よりもずっと大きくて、心の大半を占めているのに、
人間にはそれが自覚できないのかい?
わあ、びっくりだ。

博士
君は芝居を練習した方が良いのう。

とにかく、無意識はとても大きいのに、自覚することができない。
だからこそ、心には謎が多いんじゃよ。

ちなみに、無意識の中の一部には「前意識」という領域がある。

ここ子
何ですか、それは?

博士
前意識とは、普段は意識していないが、比較的思い出しやすい心の領域じゃ。
思い出そうとすれば思い出せる記憶や、体にしみついた動き等じゃな。

ここ子
体にしみついた動きというと…… 自転車の乗り方とかですか?

博士
そう。自転車だけではなく、歩き方等も前意識じゃ。
自転車の乗り方を一度覚えたら、何年たっても忘れないのは、前意識にインプットされているからなんじゃ。

トーバー
楽器の演奏のしかたや、キーボードのブラインドタッチもそれですね?

ここ子
そうか!
「習うより慣れろ」っていうのは、意識じゃなくて、前意識に入れろって事なんだ。

トーバー
私もブラインドタッチに慣れるべく、練習中なのです。

ここ子
ええっ!? ……あんた機械なのに出来ないの?

トーバー
ハッハッハ!
究極のファジー(死語)性を突き詰めた結果ですよ。むしろ高性能の証と考えていただきたいですな。

ここ子
計算する時に指折ったり、電卓探したりしてるのも高性能の証なの?

トーバー
…… さて!
そろそろ博士に「無意識」の説明をして頂きたいものですな!

博士
それでは、いよいよ無意識の話をしよう。

無意識とは、普段は意識できない心の領域じゃ。
さっきも言ったように、人間の心は無意識が大部分を占めているんじゃよ。

ここ子
そんなに大きいのに、何で意識できないんですか?

博士
意識したくないからじゃ。

ここ子
へ?

博士
例えば、ここ子君は夏の間、コートや毛布やストーブはどうしてる?

ここ子
しまってます。

博士
どうして?

ここ子
だって、必要無いし。暑い時は毛布やストーブなんて見るのも嫌ですもん。

博士
そうじゃな。見るのも嫌なものは、しまった方が良いね。

人間は生きていれば、いろいろな経験が沢山たまっていくものじゃ。
良い経験だけじゃなくて、悪い経験もね。

ここ子
ええ。たまります。それはもう、山のように。

博士
また、やりたくてもできない願望も、どんどんたまっていく。

トーバー
やりたくてもできない願望というと……
葉巻をくわえて、赤いスポーツカーに美女を乗せて、ハイウェイを暴走しながらマシンガンを撃ちまくったりする事ですね?

ここ子
あんた、そんな願望あったの?

トーバー
いいえ。
しかし、踏み切りの非常停止ボタンを押してみたいという願望はあります。

ここ子
うわ! ささやかで、大それた願望だ!

博士
とにかく人間は、嫌な事や、かなえられない願望等の心に負担がかかってしまう事を、
無意識という倉庫にしまいこんでくれるんじゃ。

トーバー
なるほど、心の倉庫ですか。
これが無いと人間はどうなるのですか?

博士
忘れた方が良い事、嫌な事、やりたいのにかなえられない事、
これら全てがいつも頭から離れなくなってしまうんじゃよ。

ここ子
うわあああ!
そんなの耐えられないです! 想像するのもイヤ!

倉庫があって良かった〜!

トーバー
なるほど。無意識とは人間に必要不可欠な、
とても便利なものなのですね。

博士
そう。たしかに無意識はワシらに必要なものなんじゃ。
しかし、必ずしも便利というわけでもないんじゃよ。

倉庫なら自由に荷物を出し入れできる。
しかし、無意識は勝手にしまい込んでしまうし、勝手に出してしまうんじゃ。

だから、必要な時に気持ちがそれたり、いらない時に記憶が蘇ったりする。

トーバー
それは困りますな。
無意識という倉庫は、機能にだいぶ問題があるようですね。
無意識が引き起こした問題の事例は無いのですか?

博士
よし。それでは無意識にまつわる話をしよう。

これは、ワシの友人の知り合いの話なんじゃが……

ここ子
ゴク…… いかにも怪談っぽい出だしだ……

トーバー! 電気! 電気消して!

博士
その男は、キノコが嫌いでな……
食べる事はおろか、見るのも嫌だったんじゃ。
いや、嫌いという表現では足りないな。
彼はキノコに恐怖を感じていたんじゃ。

トーバー
何か理由があったんですか?

博士
彼自身には思い当たる理由が無かった。

しかし、彼の親はその真相を知っていた。
彼が無意識の中に封印した、恐怖の記憶をな……

ここ子
…… して、その記憶とは?

博士
彼は子供の頃、キノコの怪物が人間を襲う怪物映画を見たんじゃ。

彼は忘れていたんじゃが、映画につきそった親は覚えていた。
それ以来、彼がキノコを食べる事ができなくなったということを……

ここ子
キャァァ!

って、全然怖くないじゃないですか。
オチも弱い! 不合格!

トーバー、明るくしていいよ〜!

博士
もともと怪談じゃないんだから、オチなんて無いわい!

トーバー
ちなみに、その怪物映画は「マタンゴ」ですね?

博士
うむ。彼は恐怖のあまり、映画を見た記憶も一緒に無意識の領域に閉じ込めていたんじゃ。
しかし、キノコを見るたびに、恐怖の感情だけがよみがえっていたわけじゃよ。

※この話は作者の創作ですが、同様の実例は数多く存在します。

ここ子
無意識が引き起こす問題って、あたし達の身近にもあるものなんですか?

博士
いろいろあるぞ。
それらの細かい問題については、後の「防衛機制」の項で述べるとしよう。

ここ子
あ! ひょっとして、あたしがクモが嫌いなのは「巨大クモ軍団の襲撃」を見たせい?

トーバー
「吸血原子蜘蛛」かもしれませんよ。

ここ子
「ジャイアント・スパイダー大襲来」説も!

博士
ワシは「スパイダーパニック!」をお薦めするぞ。

トーバー
それなら私は「スパイダーズ」を……



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