同人ゲーム製作の心理学 最終回

■■ゲーム製作者三原則■■

同人ゲーム製作の心理学も、とうとう最終回となりました。
最後にSF作家、アイザック・アシモフの「ロボット三原則」を真似た「ゲーム製作三原則」をお送りします。

・第1条 自分を大切にする事
・第2条 他人を大切にする事 ただし第1条に反する場合はこの限りではない
・第3条 ゲームを完成させる事 ただし第1条、第2条に反する場合はこの限りではない


「第1条、第2条によると、自分を大切にするためなら
 他人に迷惑をかけても構わないって事になっちゃうじゃないか!」
と思った人。まさに、そのとおりです。

人は迷惑をかけあって生きています。
自分が他人にかけた迷惑について、自分を追いつめず、自分を大切にする気持ちを残す。
その代わり、他人が自分に迷惑をかけても「それはお互いさま」と思う。

僕は、職場の仕事が猛烈に忙しい時に辞めた事もあります。
精神値が0に近づいていたからです。
その代わり、もうどうしようも無いくらい人手不足の時に、同僚が辞めた場合も笑顔で見送りました。
同僚の精神値も0に近づいていたからです。そして、同僚の退職後の幸せを祈りました。

精神値が0なのに、自分を酷使し、頑張り続ける人は、他人が頑張らない事に対して冷酷になります。
「自分はこんなに頑張っているのに、周りは役立たずでどうしようも無い!」
という状態は、第1条、第2条を破っています。
そして、自分と周りに迷惑をかけます。

逆に、第1条を「利己主義全開でOK」と解釈する人もいるでしょう。
利己主義で動き、迷惑をかけ続けると、最終的には他人からの信頼を得られなくなります。
それでは自分を大切にする事になりません。
結局、第1条、第2条を破っています。

1条と2条は、矛盾しているようでいて、実は「互いにフォローしあう」気持ちを養います。
この2つはワンセットなんです。

−−−
さあ、ここで第3条「ゲームを完成させる事」が登場します。

これが何故3番目なのか?

もちろん、1番上に持ってくる事も可能です。
僕も決して否定はしません。
ゲームの完成をあらゆる事に優先させる時がいつか来るかもしれません。
でも、それは完成寸前の「最後の修羅場」です。


修羅場を乗り切るためには、日ごろからどれだけ第1条と第2条を大切にし、
どれだけの信頼感を育ててきたかが問われます。
たとえ同じメンバーでも、創るゲームが変わるたび、互いの信頼感を高めあう事が必須条件です。
互いに迷惑をかけあい、フォローしあった仲だからこそ、苦境を乗り切る事ができるわけです。

ゲーム完成を第1条に持ってくると、完成前にチームが崩壊します。
私達は、ゲームを創るために生きているわけではありません。
生きるために必要だからゲームを創っているわけです。

ちなみに「生きるために必要」というのは、お金の事ではなく「生きがい」という意味です。
くれぐれもお間違いなきようお願いします。

信頼感のある仲間達は、ゲームを完成させる事で、より信頼感が強まります。
そして、第3条が達成された時、第1条、第2条も同時に達成できるんです。

−−−

第2回で
「創造力は不幸力」
と書きました。

自分や他人を大切にすると、不幸力が落ちはしないだろうか?
ダレないだろうか?
と心配する人もいるかもしれません。

大丈夫です。どんなに助け合い、信頼感を作り上げても、
結局のところ創作者は常に孤独です(それを大丈夫と言っていいかどうかはともかく)。
「自分の事は自分にしか分からない」
それを感じるのは、他人に対する不信感ではなく、人が生きる限り当然の事実をキャッチするアンテナが鋭敏だからです。
自分が孤独である事に胸をはって下さい。不幸である事も受け入れて下さい。

そして、自分と他人を大切にし、完成の喜びを分かち合って下さい。

最後にもう一度書きます。
私達は生きるために必要な手段として、一度はゲーム創りを選びました。

もちろん、生きるために、ゲーム製作以外の道を選びなおす事も自由です。
でも、自分には何かが必要だった事だけは忘れないで下さい。

この長いコラムを読んでくださった方々。
本当にありがとうございました。
これを読んで下さった事が、私の創作力の重要な源になっています。

「同人ゲーム製作の心理学」が皆さんの創作力の源の一つになって頂ければ幸いです。



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