コスモ心理研究所-0501-

■■悩みに効く!? 論理療法■■

トーバー
おおおお! 何という事だ。

ここ子
どしたの?

トーバー
新タイプの洗剤を作ってみようと思って、
薬品を調合してみたのですよ。

ここ子
へえ。すごいじゃない。

トーバー
それで、さっそく新型洗剤を試してみたのですが。

ここ子
うん。

トーバー
洗濯機が壊れました。

ここ子
ええっ!? 何てことしてくれんのよ!

トーバー
あああ…… この私がミスを犯すとは……
もう私は稼動する価値がありません。
私はただのガラクタなのです。
全く申し訳ありません。

ここ子
ちょっ! ちょっと。
あたしも大きな声出して悪かったからさ。
洗濯機くらいどってことないって。
最新式のを買えばいいじゃない。

トーバー
いえ、洗濯機のことを問題にしているわけでは無いのです。
私がミスをした事を私自身が許せないのです。
ミスを許すなゲッターパンチ。

博士
どうしたのかね?

ここ子
博士〜! トーバーが落ちこんじゃって大変なんですよ。

トーバー
私は駄目なロボットです。
論理的に考えて駄目なのですから、間違い無く駄目なのです。

ここ子
何でも論理なんだねえ。

博士
それじゃ、トーバー。
これからワシらと「論理療法」を学んでみないかね?

トーバー
論理療法…… アルバート・エリスが開発したカウンセリング技法ですね。

ここ子
いかにもトーバー向きっぽいなあ。
そんで、あたしには向かないっぽいですね。

博士
なに、考え方はそれほど難しいものじゃないよ。
無意識の世界を扱わないから、むしろ分かりやすいくらいじゃ。

何より論理療法は、自分の悩みを自分自身の力で
解決するのに向いているんじゃよ。

ここ子
そうなんですか。
難しくないっていうんなら、聞いてみようかな。
それじゃ、お願いします。

ほら、トーバー!
床をグリグリいじってないで聞こうよ!

トーバー
はあ……
分かりました。うかがってみましょう。

博士
まず、ワシらにはいろいろな悩み事があるよね。

ここ子
はい。あたしも悩み事がありすぎちゃって困ります。

博士
たとえば?

ここ子
あたし、料理もお裁縫も苦手なんです。女としてどうかと思います。

郵便局や駅で並ぶと、いつもあたしの前の客がもめるんです。
これはイライラしますよ〜。

それと、嘘をついたり、隠し事をする人がいると腹が立ちます。

あと、あたしの前にちっとも理想の男の人が現れません。
もうダメなんじゃないかと……

博士
なるほど。トーバーはどうじゃな?

トーバー
私は失敗をしでかしたんです。
私のような失敗をする駄目なロボットは壊れた方が良いのです。
それだけですよ。

博士
うんうん。みんな大小いろいろな悩みがあるようじゃね。

ここ子
まだまだありますよ!!

最近一番腹が立ったのは、昨日電車で席を譲ったのに、
相手の人はお礼も何も言わなかったんです。
もう、絶対に許せないですよ!

でも、こういう悩みってどうにもなんないですよね。

博士
ふむ。どうにもならないのはなぜかな?

ここ子
だって、席を譲っても黙って座る人に
「お礼を言いなさい!」
とは言えないじゃないですか。
さすがに恩着せがましくって……

でも、相手が悪いのは確かなんだし、
それで嫌な気分になるのは当然ですよね。

博士
なるほど。
嫌な気分になるのは当然と思っているんじゃね。

では、その根拠は何じゃろうか?

ここ子
えっと。根拠なんて無いですよ。
何かしてもらったら、お礼を言うべきです。

そうじゃないと、自分がした事に意味が無いみたいじゃないですか。
ねえ、トーバー。

トーバー
ええ、同感です。

自分達の行動に意味を感じるどうかは、
他人から感謝されるかどうかで大きく変わるというのが、
我々の価値観ですからね。

ここ子
うん。それは世界中どこへ行ってもそうなんでしょ?

トーバー
むむ?!
待って下さい。ここ子さん。

親切に対して礼を言わなければならないというのは、
世界中の人間全ての価値観ではありません。

ここ子
まっさかぁ!

トーバー
モンゴルの人達はめったにお礼を言わないそうです。

ここ子
何で? みんな失礼な人達ばかりの嫌な国だから?
恩知らずの国なの?

トーバー
いえいえ。
モンゴルの人達は普段から助け合って生きるのが当たり前なので、
小さな事で礼を言うのはかえって失礼だという文化なのです。
と、中学校の国語の教科書に書いてありました。

ここ子
そうか。
お礼を言うのが当たり前じゃない国もあるんだね。

トーバー
ええ。

ここ子
でも、ここは日本だよ!
日本人は日本の流儀にあわせなきゃダメでしょ!

トーバー
では、日本人なら全員、お礼を言われないと不愉快になるのでしょうか?

ここ子
うーん。まあ、気にしない人もいるんじゃないの?
お礼を言われなくても、自分のした事に満足する人もいるだろうしね。

トーバー
ええ。「お礼を言われなくても気にしない」という
価値観を持つ人がいる以上、
我々の「お礼を言うべきだ」という価値観は絶対の真理では無さそうですよ。

ここ子
だとしたら、どうなの?

トーバー
我々が嫌な気分になる仕組みはこうです。

・礼を言われなかった(出来事)
 ↓
・相手は礼を言うべきだ(自分の価値観)
 ↓
・怒り(感情)

ここ子
うん。これって1章で習った事だよね。

トーバー
しかし、世の中にはこのような人もいるのではないでしょうか?

・礼を言われなかった(出来事)
 ↓
・相手に礼を言われれば嬉しいが
 「必ず言うべき」
 とは思わない(自分の価値観)
 ↓
・怒らない(感情)

ここ子
うーん。いるかもしれないけどさぁ。
そんな人って少ないわよ。

トーバー
そういう人が多いか少ないかは、我々には関係ありません。

重要なのは、後者のような人達の価値観は自分の心を痛めつけないということです。

ここ子
ということは、あたし達も価値観を変えれば、
嫌な気分になることを減らせるってわけ?

トーバー
論理的に言って、そういう事です。

ここ子
考えてみると、相手を薄情者あつかいして、
ストレスを溜めるのは、自分にとって損だもんね。

うん。ちょっとぐらいは考えなおしてもいいかも。

トーバー
お待たせしました。
二人の意見は一致しました。

では、博士。論理療法はどのようなものなのですか?
ご説明お願いします。

博士
ハッハッハ!
どのようなも何も、今トーバーが考えた事が論理療法そのものなんじゃよ。

さすが、日頃から論理を重んじているだけの事はあるね。

ここ子
本当に!?
凄いじゃない。トーバー。

トーバー
いや。そんな事はありませんよ。
宇宙にはどのような偶然も起こり得るのです。
今回も、偶然私の考えと一致しただけですよ。

なぜなら私は駄目ロボットなのですから、
正しい事を言うわけが無いのです。

ここ子
また落ちこむー!
ああもう、床をグリグリしないで!
ほら、ヒビが割れた!



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