コスモ心理研究所-0407-

■■ストローク対ストローク■■


トーバー
すれ違う人間関係の謎も解けましたし、交流分析の勉強も終わりですね。

博士
いや、せっかくだから、もう少しつっこんだ解説もしていこう。
人間関係のすれ違いの根の深さが、あらためて分かってくるはずじゃ。

ここ子
人間関係の根の深さですか?
なんだか怖そうですね。

博士
そうじゃな。今までは交流分析の分かりやすくて面白い部分を学んできたが、
これから先は、自分の内面のアンバランスさを見つめていくことになるから、
ちと辛い勉強になるかもしれんな。

ここ子
辛いんですか。それじゃあ、あたしはこの辺で……

トーバー
大丈夫ですとも!
それでも勉強を続けるのが、我々学究の徒の使命ではないですか。
そうですよね。ここ子さん。

ここ子
そ、そうだよ、キュートがあたしの使命よ!

博士
うん。それじゃあ続けようか。

交流分析では「ストローク」という概念を重視しているんじゃが、
君達は聞いたことがあるかな?

トーバー
ああ、私は2ストロークよりも4ストロークの方が
燃費が良いので好きなのですよ。

ここ子
それはエンジンの話でしょ?
心理学に関係無いじゃない。
ストロークはテニスやゴルフで使う言葉だよ!

トーバー
球技なら心理学と関係あるのですか?

博士
ストロークは様々な方面で使われる言葉じゃが、
交流分析では「相手に対する気持ちの投げかけ」の事を言うんじゃ。

トーバー
そうだったのですか。
例えばどのようなものですか?

博士
ストロークには3種類ある。

1・身体的ストローク
  抱きしめる、握手、キス、殴る、等

2・言語的ストローク
  話しかける、挨拶する、誉める、けなす、等

3・非言語的ストローク
  微笑みかける、うなずく、見つめる、にらむ、等

じゃよ。

ここ子
な〜んだ。
あたし達が人と会った時に、普通にやってる事もけっこうあるね。

博士
そう。この当たり前のことが人間が生きていくために、
もの凄く重要な事なんじゃよ。

ここ子
生きるのに重要と言っても、そんな特別な事じゃないでしょう。
話しかけたり、うなずいたりするだけですもん。

トーバー
しかし、空気だってどこにでもありますが、とても重要ですよ。

ここ子
うーん、そうか〜
でも、空気のありがたみは分かるけど、
ストロークの方はまだピンとこないなあ。

博士
なに、もう少し説明していけば、重要性が明らかになるよ。

ストロークには

○プラスのストローク
○マイナスのストローク

の二種類があるんじゃ。

相手が好意を確認できるのが、プラスのストローク。
相手に否定的な感情を抱かせるものが、マイナスのストロークじゃ。

トーバー
握手、誉める、微笑むのはプラスのストローク。
殴る、けなす、にらむのはマイナスのストロークというわけですね?

ここ子
誉められたりする、プラスのストロークをもらうと、
「あたしは好かれてるんだな」っていう、良い気分になれます。

でも、バカにされたりして、マイナスのストロークをもらうと、
「あたしは認められてないんだ」っていう憂鬱な気分になりますね。

博士
そう。それがストロークの効果なんじゃよ。

ここ子君はプラスのストロークをもらわずに生きていけるかね?

ここ子
あっ、絶対無理!
プラスのストロークが無かったら生きていけないです。

自信も無くしちゃうし、やる気も無くしちゃうし。

トーバー
生きる気力が無くなっていくわけですな。

ここ子
あと、自分がプラスのストロークをもらえないと、
自分も他の人にプラスのストロークをあげなくなっちゃうと思います。

博士
良いところに気づいたね。
プラスのストロークを沢山もらっている人は、
他人にプラスのストロークを与えることを惜しまないんじゃよ。

トーバー
では、マイナスのストロークを沢山受け取った人は、
他人にもマイナスのストロークを返すんですか?

博士
その通りじゃ。

ここ子
あたしも、マイナスのストロークをもらってイライラすると、
やつあたりしちゃうからね。

トーバー
では、プラスのストロークは人間が生きていくために必要なもので、
マイナスのストロークは生きる上で邪魔になるのですね?

博士
さて、そこで問題じゃ。
人間にとって耐えられないのはどちらかな?

1・「マイナスのストロークを受け取る」
2・「プラス、マイナスどちらのストロークも受け取らない」

トーバー
当然、1番ですよ。
叩かれたり、けなされたりするよりは、
何も無い方がましに決まっているではないですか。
しごく論理的な帰結ですよ。

ここ子
うーん、あたしは2番かなあ……

トーバー
ほう! ここ子さん、やりますね。
答えが1番ならば、わざわざ博士は問題にしないであろうという、
出題者の裏をかく論理を展開したわけですな?

ここ子
そんな面倒な事考えないってば!

あたしだって馬鹿にされたり、怒られたりするのは嫌だけど、
何もストロークがもらえないって事は、「無視される」って事でしょ。

あたしはそれが一番辛いと思う。

トーバー
フーム。しかし、馬鹿にされるのも、無視されるのも、
自分の存在価値が否定されているという点では同じですよ。

ここ子
全然違うよ。

馬鹿にするんだって、それは、相手があたしを意識してるって事でしょ?
でも、無視は違うもん。それが一番、あたしの存在を否定されてるって事だもん。

トーバー
馬鹿にされても、叩かれても、
それは無視されるよりましなのですね。

博士
うん。人間にとって、一番耐えられないのは「無視」、
つまり、交流が無い事なんじゃよ。

ここ子
あたし、ストロークが空気みたいに大切っていう意味が分かりました。
プラスでも、マイナスでも、無いと生きられないんですね。

トーバー
ふーむ。なるほど。 それではストロークが与えられないと、人間はどうなるのですか?

博士
そういう時は、何とかして、ストロークを得ようとするんじゃ。
手っ取り早い方法でね。

トーバー
ベルマークを集めて、小学校に寄付するとか?
感謝という、プラスのストロークをもらえますよ。

ここ子
それは地道すぎるって!

トーバー
善行とはそういうものです。

博士
トーバー、手っ取り早いのは、プラスよりもマイナスのストロークを得ることじゃよ。

トーバー
マイナスですって? 何をするのですか?

博士
相手を傷つけて嫌われる。いたずらをして怒られる。
他人に迷惑をかけて気をひく方が早いんじゃ。

ここ子
あ〜。やったやった!
あたしも身に覚えが沢山あるよ。

トーバー
なるほど、確かに嫌われるのは、好かれる事に比べて簡単かつ確実ですからね。

寂しがり屋のいたずらっ子は、昔のドラマの定番キャラクターでしたが、
実は説得力のある設定だったわけですな。

博士
短気なガミガミ親爺も、「実は寂しかった」というオチになっていたのう。

ここ子
何で話がどんどん昭和に向かうわけ!?

トーバー
一応確認しておきたいのですが、このプラスとマイナスは、
与える人の価値観によって決まるのですか?
それとも、受ける人の価値観ですか?

ここ子
どういうこと?

トーバー
例えば、与える人が親しみをこめて、肩をたたいたとしても、
受け手が殴られたと思ったら、そのストロークはプラスかマイナスか
という事ですよ。

博士
ストロークは受け手がどう感じたかによって決まるんじゃ。
だから、受け手が殴られたと思ったら、それはマイナスのストロークになるな。

ここ子
うわあ。それはもったい無いですね。

博士
ストロークはさらに

○条件つきストローク
○無条件のストローク

に分かれる。

条件つきプラスのストロークの例は、

「100点取ったら誉めてあげる」
「仕事ができるから偉い」

条件つきのマイナスのストロークは、

「遅刻した子はバツ当番」
「勉強しないとおこづかい抜き」

といったものじゃな。

ここ子
あああ! 嫌な記憶が蘇る〜!!

博士
無条件のプラスのストロークの例は、

「あなたが生きてることが嬉しい」
「ありのままの君が好きなんだ」

無条件のマイナスのストロークは、

「そばにいるだけで、ムカつくんだよ」
「お前なんか生まれてこなければ良かった」

といったものじゃ。

ここ子
無条件のマイナスはきついわねえ。
こんな事を言われ続けたら、あたし確実にグレるわ。

トーバー
無条件のマイナスはともかく、
条件つきのストロークは子供のしつけには必要なものですね。

ここ子
うん。
「いい事したら誉める」「悪い事したらしかる」っていうのは、 当たり前だよね。

博士
たしかに、それはしつけの基本じゃ。
じゃが、仮に「いい子でいたら誉める」「勉強を頑張ったら誉める」
という、条件つきのプラスのストロークだけを与えられたら、
子供はどんな気持ちになると思うかね?

ここ子
それは誉められるんだから自信もつくし、良い事ずくめじゃないですか?

博士
それが違うんじゃよ。
「○○できたら愛される」というストロークばかり受け取っていると、
「自分は優秀でなければ価値が無い」「本当の自分は愛されていない」と考えるようになる。

そして、「親の期待を裏切ったら見捨てられるのではないか?」という
不安に怯えながら生きていく事になるんじゃ。
その不安は大人になってからも続くんじゃよ。

ここ子
そ…… そんなぁ!
それじゃ子供が可愛そう!

トーバー
良いことをしたら誉めるというだけでは、不十分なのですね?
では、子育てには何が必要なのですか?

ここ子
ええと…… なんだろう。

あっ!!
「無条件の愛情」!?

博士
その通りじゃ。無条件の愛情が充分に与えられ、
子供が「自分は生きているだけで価値があるんだ」という
安心感を得ることがまず必要なんじゃよ。

トーバー
では、子供は目一杯、甘やかして育てた方が良いのですね?

博士
それも違うんじゃよ。
甘やかしや過保護は決して子供の人格を認めているわけではないからじゃ。
まるでペットのように、自分の人生のアクセサリーとして子供を可愛がれば、
それは子供にとっては、虐待と同じなんじゃよ。

ここ子
ただ叱れば良いわけじゃないし、甘やかせば良いわけでもない。
誉め方次第では、やっぱり子供を追い詰める事もある……
子育てって単純じゃないんだね。

トーバー
本当に難しいですな。
何かシンプルな原則はないのですか?

博士
シンプルな原則か……
「相手の為に、相手本意に時間を与えること」
これが精神分析における、愛情の定義じゃ。

子供の意志決定を待ち、子供の成長を待つ。
親のペースで子育てをしないことなんじゃ。
子供の意思を尊重する事は、甘やかしではないんじゃよ。

ここ子
大人同士でも、その交流はやっぱり大切ですもんね。

そういえば、トーバーは、あまりプラスのストロークを表現しないよね?

トーバー
失敬な。
では、私はここ子さんに「ほほ笑み」という、プラスの身体的ストロークを与えてみせますよ。

ここ子
あんた、顔無いじゃない!

トーバー
見てて下さいよ。いきますよ。

………………

ここ子
………………

トーバー
(;´ー`)

ここ子
何? それ?
インチキくさっ!!

しかも、ぎこちなっ!

トーバー
………………

(^∀^)

(^∀^)(^∀^)

(^∀^)∀^)^))∀)^))te^)∀%∀^.s5u∀p/+)))7re=゚6/^)∀^)6ik

ボム!!

ここ子
あっ! 熱暴走したっ!!

博士! 博士〜!



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