コスモ心理研究所-0102-
■■感情 抑えるか否か？■■
ここ子
まず１番ですけど、感情を抑えちゃいけないんですか？
あたしは子供の頃に親から「ほらほら泣かないの！」とか
「小さな事で怒っちゃダメ！」なんて言われてましたけど。
トーバー
それは、言いかえれば「ネガティブな感情は抑えなさい」という事ですね。
大抵の子供は、親からそのような教育を受けて育つようですが。
博士
そう。我々は子供の頃から感情を抑えるように言われて育ってきた。
子供は親の言う事を素直に聞いて、自然に自分の感情を抑えたり、無視したりしようとして育ってしまう。
その結果どうなるか分かるかな？
トーバー
論理的に考えれば、幼い頃からそのような教育を受ければ、
自分の感情のコントロール能力を向上させることが出来るのではないでしょうか？
ここ子さんは不幸にして向上しなかったようですが。
ここ子
うるさい！
だいたい人間の心はそんなに論理的に向上しないってば。
博士
そうなんじゃ。ここ子君の言うとおり、
人間の心は論理的に出来ていないんじゃよ。
感情を否定したり、無視したりすれば、一見感情をうまくコントロールしているように思える。
じゃが、それは自分の本当の感情に気づかない状態を作り出しているだけなんじゃ。
ここ子
自分の感情に気づかないと、いったいどうなるんですか？
博士
たとえば、風邪をひいている事に気づかずに、平気で薄着をしているとどうなる？
ここ子
重病になっちゃいます。
トーバー
たかが風邪といえども、油断は禁物ですな。
博士
感情も同じなんじゃよ。
感情の強いエネルギーに気づかなかったり、抑えこもうとしていると、
自分の心はどんどん感情に蝕まれていくんじゃ。
ここ子
大した理由も無いのに、何故かイライラする気分になったりすることがありますけど、
感情に気づいていないのが原因なんですね？
トーバー
ここ子さんは、一昨日もイスを蹴飛ばしたりドアを強く閉めたりして、
粗暴さに磨きがかかってましたが。
あの時の感情はどうだったのですか？
ここ子
そうだっけ？
自分では気がつかなかったけど、
腹が立つことでもあったかなあ……
ええと、一昨日はトーバーと買い物に行ったんだよね。
それで……
思い出した！
そこで、あたしの服のセンスをいちいち批評されたんだった。
トーバー
ええ、当時ここ子さんはずっと無表情だった事を記憶しています。
何も感じていなかったのではないですか？
私もそれで気がね無く、自分の意見を述べる事ができたのですよ。
ここ子
うん。うるさいなあとは思ってたんだ。
でも、いつもの事だから聞き流してたんだけどね……
今気づいた！
本当はとっても、とっても、とっても、とっても腹が立ってたんだ！！
トーバー
ああ、今になって怒られるとは思いませんでしたよ。
しかし、一昨日は私に対する怒りの感情を無視していたわけですね？
何故ですか？
ここ子
たまの休日に遊びに行って、いちいち腹を立てるのが嫌だったのよ！
トーバー
それだけですか？
ここ子
やっぱり、怒ったりするのって良くないような気がしたのもあるしね。
あたしも大人なんだから、我慢しなくちゃって言い聞かせてたのよ。
でも、それは間違いだって博士も言ったし、今からトーバーをぶっ壊す！
博士、怒りにまかせて行動しても良いんですよね？！
博士
待った待った！ 早とちりしちゃいかん！ いいかね？
自分の感情に気づくことと、感情的になって暴れるのとは違うんじゃよ。
ここ子
そんなあ。だって怒ったら、殴ったり蹴ったりしたくなるでしょ？
博士
しかし、自分の怒りに気づいたら、その感情が起こす行動を止める事もできるんじゃないかね？
選択するのは君自身なんじゃぞ。
ここ子
ええと…… まあ…… そうですね。
自分の気持ちに気づいてスッキリした気もしますし。
暴れるのは止めておきます。
博士
うんうん。それは良かった。
怒りに気づかずに、抑圧しつづけた結果、爆発する暴力は恐ろしいものじゃ。
悲しみに気づかずにいれば、いつまでも不安な気持ちが抜けないじゃろう。
まずは自分の感情に気づくこと。それがなければ、感情が引き起こす様々な影響に対処する事はできないんじゃよ。
トーバー
ああ、やれやれ。助かりました。
しかし、論理的に考えれば、感情に気づけば気づくほど心の傷も増えるのですから、
余計な感情はできるかぎり感じない方が良いのではないでしょうか？
心穏やかに生きる事も人間の望みでしょう？
博士
うん。心穏やかに生きる事はたしかにワシらの望みじゃよ。
しかし、さっきも言ったが、「風邪に気づかない＝健康」と思っていたら体を壊すよね？
そしてこれも重要なんじゃが、悲しみを感じない人は、喜びを感じる事も苦手になっていくんじゃ。
何も感じない事で、心が穏やかになったとしても、それは決して幸せなことじゃないよね？
ここ子
じゃあ、悲しみを感じる事が上手くなれば、喜びを感じる事も上手くなるんですね！
たしかに、そういう事をいっぱい感じた方が、成長できるかもしれないな。
トーバー
なるほど。
悲しみも、喜びも、怒りも上手く対応すれば、全て自分の糧になるわけですね。
実に合理的ですな。
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